日産は2027年度に自動運転で稼げるか――数十台から始まるレベル4移動サービス

日産は2027年度に自動運転で稼げるか

自動運転は、自動車メーカーにとって新しい車両機能なのでしょうか。

それとも、利用者が乗るたびに料金を受け取り、運行管理や遠隔監視から継続的に収益を得る新しい交通事業なのでしょうか。

日産自動車は、後者につながる可能性を持つプロジェクトを進めています。

目標は、2027年度に遠隔監視設備を備えたレベル4自動運転モビリティサービスを提供することです。

計画どおりに進めば、日産は自動運転車を販売するだけでなく、自ら開発した車両とシステムを使って移動サービスを提供する段階へ踏み出します。

ただし、2027年度という時期は「全国で無人タクシーが本格普及する時期」ではありません。

当初計画は、地方を含む3~4市町村、数十台規模です。

この小さな商用化を採算の取れる事業へ拡大できるかが、日産の自動運転戦略を評価する重要な分岐点になります。

目次

2017年度から続く自動運転サービス開発

日産は2017年度から、自動運転技術を使ったモビリティサービスの実証を続けています。

横浜のみなとみらい地区では、オンデマンド配車サービスの実証を行い、福島県浪江町では有人のモビリティサービスを運営してきました。

海外でも英国ロンドンなどで自動運転技術の検証を進めています。

この取り組みの目的は、運転支援機能を高度化することだけではありません。

少子高齢化に伴う運転手不足や、公共交通を維持することが難しい地域の移動問題に対して、自動運転車を使った新しいサービスを提供することです。

ただし、未来産業地図が注目するのは地域政策そのものではありません。

日産が自社開発の自動運転技術を、車両、ソフトウェア、遠隔監視、配車、運行管理を組み合わせた収益事業へ変えられるかです。

横浜の一般道路でドライバーレス走行

日産は2025年3月、横浜市みなとみらい地区の一般道路において、運転席を無人にした自動運転実験車の走行を公開しました。

実験車両はミニバンのセレナをベースにしています。

車両にはカメラ、レーダー、LiDARが搭載され、周囲の車両、歩行者、道路、信号などを認識します。

日産の技術資料によると、最新の実験車両には14台のカメラ、9台のレーダー、6台のLiDARが搭載されています。

車高のあるセレナのルーフ部分にセンサーを配置することで、広い範囲を検出し、歩行者の行動予測、車線合流、交差点へ進入できるかどうかの判断など、複雑な市街地走行へ対応します。

これは、車両の周囲に他の一般車両や歩行者が存在する「混在交通」の中で、ドライバーレス運行を実現するための技術です。

専用道路や閉鎖された施設内だけを走る自動運転車よりも、技術的な難易度は高くなります。

遠隔監視が無人運行を支える

レベル4自動運転では、定められた走行条件や区域の中で、運転者が操作しなくてもシステムが運転を担当します。

しかし、車両が判断に迷う状況や、道路工事、事故、障害物などの予期しない事態がなくなるわけではありません。

そのため、日産のサービス計画では遠隔監視が重要な役割を持ちます。

車両と自動運転システムの故障に対応する構成に加え、遠隔から車両を監視・支援する設備が用意されます。利用者が運転者のいない車両へ安全に乗り降りするための機能も必要です。

日産は、判断が難しい状況に遭遇した車両を人が遠隔支援する「シームレス・オートノマス・モビリティ」、SAMの開発も進めています。

一人の遠隔担当者が複数の車両を効率的に支援できれば、車両ごとに一人の運転者を配置する場合と比べて、人件費を抑えられる可能性があります。

反対に、遠隔監視に多数の担当者が必要になれば、運転席を無人にしても十分なコスト削減につながらない可能性があります。

無人運行を実現できるかだけでなく、何台の車両を何人で監視できるかが事業採算を左右します。

2027年度までのロードマップ

日産が公表した当初のロードマップでは、2024年度に横浜のみなとみらい地区で、セレナをベースにした自動運転車両の走行試験を実施します。

2025年度から2026年度には、みなとみらい、桜木町、関内を含む横浜エリアで、20台規模のサービス実証を進めます。

この段階ではセーフティドライバーが同乗し、利用者の受容性、安全性、配車や運行の仕組みを検証します。

そして2027年度には、地方を含む3~4市町村へ展開し、数十台規模でサービスを提供することを目指しています。

自動運転の段階を引き上げ、遠隔監視を備えたレベル4サービスへ移行する計画です。

ただし、2027年度の開始地域、正式な料金、運行台数、運行時間、サービス範囲は、すべてが確定しているわけではありません。

現時点では「全国展開」ではなく、限定された地域で事業化の成立条件を確認する段階です。

Moplusは何を担当するのか

日産と三菱商事は2025年3月、次世代モビリティサービスとEVを活用したエネルギー関連サービスを進めるため、Moplus株式会社を設立しました。

Moplusは、横浜における自動運転実証を運営面で支援するほか、有人モビリティサービス、カーシェアリング、エネルギーマネジメントサービスなどを展開します。

この体制から、日産が自動運転車の開発だけで事業を完結させようとしているわけではないことが分かります。

日産は車両と自動運転技術を担当し、Moplusが地域でのサービス運営や事業モデルの構築を支える形が想定されます。

自動車メーカーが得意とする車両開発と、日々の予約、配車、料金回収、利用者対応などの運営業務は異なります。

Moplusとの連携は、自動運転技術を実際に利用される交通サービスへ変えるための事業基盤として注目されます。

日産が得られる収益は何か

日産の自動運転モビリティサービスには、複数の収益形態が考えられます。

一つ目は、自動運転車両の販売やリースです。

二つ目は、自動運転ソフトウェアやセンサーシステムの提供です。

三つ目は、遠隔監視や車両管理システムの利用料です。

四つ目は、乗客が支払う運賃や月額料金です。

五つ目は、保守、地図更新、ソフトウェア更新など、運行開始後も継続するサービス収益です。

自動運転車両を交通事業者へ販売するだけなら、日産の収益は従来の自動車販売に近いものになります。

一方、運行管理、遠隔監視、配車システムまで継続して提供すれば、車両販売後にも収益を得られる可能性があります。

しかし、現時点で日産は、利用料金、1台当たりの運行収入、遠隔監視費用、黒字化に必要な台数などを公表していません。

したがって、自動運転サービスが日産の業績へどの程度貢献するかは、まだ判断できません。

数十台から量産事業へ進めるか

2027年度に予定される数十台規模のサービスは、日産全体の売上規模と比べれば小さなものです。

重要なのは、最初の数十台から何を学び、何台まで拡大できるかです。

車両を増やすほど、遠隔監視、整備、清掃、充電、利用者対応などの運営負担も増えます。

一方、同じソフトウェアや監視システムを多数の地域と車両で共用できれば、台数の増加に伴って採算が改善する可能性があります。

投資判断では「2027年度にサービスが始まったか」だけでなく、開始後の運行台数、利用者数、稼働率、運賃収入、遠隔監視の効率、追加地域への展開を確認する必要があります。

市販車の次世代ProPILOTとは別の計画

日産は2027年度に、市販車へ次世代ProPILOTを搭載する計画も進めています。

しかし、市販車向けの次世代ProPILOTと、今回取り上げるレベル4モビリティサービスは同じものではありません。

市販車向け技術は、運転席の利用者が監視責任を持つレベル2の運転支援として導入される計画です。

一方、モビリティサービスは、限定された区域と条件で、遠隔監視を使いながら運転席を無人化するレベル4を目指しています。

「2027年度に日産が自動運転を導入する」という言葉だけでは、二つの計画が混同される可能性があります。

投資材料として評価するときは、市販車向け運転支援と、無人移動サービスの事業化を分けて確認する必要があります。

現時点で確定していること

日産は2017年度から自動運転モビリティサービスの実証を続けています。

横浜の一般道路では、セレナをベースにした実験車両を使い、運転席を無人にした走行が公開されています。

日産と三菱商事は、サービス運営を支えるMoplusを設立しています。

横浜エリアにおけるサービス実証と、2027年度のレベル4サービス提供目標が公表されています。

現時点では目標・未確定であること

2027年度のサービス提供は目標であり、すべての開始地域、運行条件、料金、車両数が正式決定したわけではありません。

全国展開の時期、量産車両の仕様、1台当たりの導入費用、遠隔監視に必要な人数、事業の黒字化時期も公表されていません。

日産の売上高や利益に対する具体的な貢献額も未確定です。

投資判断で確認したい変化

最初に確認したいのは、2027年度に実際の利用者から料金を受け取る有償サービスが始まるかです。

次に、当初の3~4市町村、数十台規模から、運行地域と台数が拡大するかを確認します。

さらに、日産が車両販売だけでなく、自動運転ソフトウェア、遠隔監視、配車、保守から継続収益を得られるかが重要です。

Moplusの契約件数、交通事業者との提携、車両稼働率、遠隔担当者一人当たりの監視台数も、事業採算を判断する材料になります。

未来産業地図の見方

日産のプロジェクトは、自動運転技術の性能を競うだけの計画ではありません。

自動車メーカーが自ら移動サービスへ進出し、車両販売とは異なる収益源を作れるかを試す事業です。

2027年度に数十台が走り始めても、それだけで日産の業績が大きく変わるわけではありません。

しかし、安全性と採算性を証明し、複数地域、数百台、数千台へ展開できれば、日産の自動運転技術は研究開発費を使う段階から、継続収益を生む事業へ変わります。

未来産業地図では、有償サービスの開始、正式な運行地域、車両台数、料金体系、Moplusの役割、遠隔監視の効率、日産の収益への影響まで継続して追跡します。

※本記事は公開資料をもとに、技術とプロジェクトの進展を整理したものです。特定企業の株式購入や投資を推奨するものではありません。

主な根拠資料

日産自動車「モビリティサービス技術概要」
https://www.nissan-global.com/JP/INNOVATION/TECHNOLOGY/ARCHIVE/MOBILITY_SERVICES/

日産自動車「進化したドライバーレス自動運転実験車の走行を公開」
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/250310-01-j

国土交通省「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティにおいて日産自動車の取り組みを取り上げます」
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000482.html

経済産業省「日産自動車株式会社 事業者説明資料」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/Automated-driving/7_jigyoushasiryou_nissan.pdf

日産自動車「シームレスオートノマスモビリティ」
https://www.nissan-global.com/JP/INNOVATION/TECHNOLOGY/ARCHIVE/SAM/

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この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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