日本初、HAPSが日本上空でスマホ通信に成功――ソフトバンク「空飛ぶ基地局」は2027年に商用化できるか

日本初、HAPSが日本上空でスマホ通信に成功
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「空飛ぶ基地局」が日本上空で通信に成功

高度約20kmの成層圏から、地上のスマートフォンへ直接電波を届ける。

災害によって地上基地局が使えなくなっても、空から通信を復旧させる。

構想段階だった「空飛ぶ基地局」が、日本上空で実際の通信試験に成功しました。

ソフトバンクと米国Sceyeは2026年9月2日、LTA型HAPSを使った日本国内での試験サービスに成功したと発表しました。

今回確認されたのは、単に機体が日本まで飛行できたという事実だけではありません。

地上のスマートフォンによる音声通話、動画通信、緊急速報メール、ドローンの遠隔制御、さらにHAPS上で情報を処理するエッジコンピューティングまで検証されています。

米国から日本まで1万5,000km以上を飛行

今回使用されたのは、Sceyeが開発するLTA型HAPSです。

LTAとは「Lighter Than Air」の略で、ヘリウムの浮力を使って上昇し、成層圏に長期間滞空する方式を指します。

SceyeのHAPSは、2026年8月9日午後10時に米国ニューメキシコ州ロズウェルを出発しました。

太平洋上空を約13日間、1万5,000km以上飛行し、8月23日午前7時11分に日本上空へ到達しています。

その後、高知県室戸市周辺の室戸岬沖上空で、成層圏の風向きや風速に対応しながら、指定された試験エリア内に長時間滞空しました。

機体は半径最小5km以内に位置を保ち、日本の気象条件でも一定範囲内に滞空できることが確認されています。

従来は米国内での飛行実績が中心でしたが、今回の試験によって、太平洋を横断して日本まで移動し、日本上空で通信基地局として運用できる可能性が示されました。

日本上空からスマートフォンへ直接通信

HAPSには、4G LTE相当の基地局が搭載されました。

この基地局を高知県に設置した地上ゲートウェイを介して、ソフトバンクのコアネットワークへ接続しています。

地上では一般的なスマートフォンを使い、次の通信が検証されました。

  • 音声通話
  • テキストメッセージの送受信
  • SNSなどのアプリケーション
  • 動画の視聴
  • ビデオ通話
  • 緊急速報メール
  • 118番への緊急通報

ソフトバンクは、既存の地上基地局との電波干渉を抑えながら、地上ネットワークと同等の通信性能を確認したと説明しています。

日本上空を飛行するHAPSから、地上のスマートフォンおよびドローンとの通信試験に成功したのは、日本で初めてとされています。

ただし、この「日本初」は、2026年8月23日時点の公開情報に基づくソフトバンクの調査です。

大規模災害時の通信手段になるか

HAPSの利用先として特に注目されるのが、大規模災害時の通信です。

地震、津波、豪雨などによって地上基地局や通信回線が被害を受けると、携帯電話の通信を維持できなくなる可能性があります。

人工衛星も災害通信に利用できますが、衛星の高度や通信方式によっては、遅延、対応端末、通信容量などに制約があります。

HAPSは人工衛星より地上に近い高度約20kmを飛行するため、広い範囲をカバーしながら、比較的低遅延で通信できる可能性があります。

今回の試験では、通常の通話やデータ通信だけでなく、緊急地震速報や津波警報などの緊急速報メールが動作することも確認されました。

海上保安庁の協力により、海難事故などで使用される118番への音声通話も検証されています。

今後は、災害発生後にどの程度の時間で通信を提供できるのか、同時に何台の端末を接続できるのか、既存の災害通信システムへ正式採用されるかが焦点になります。

HAPSとドローンの通信にも成功

今回の試験では、HAPSと飛行中のドローンとの通信も行われました。

HAPSの通信環境を使ってドローンを遠隔制御し、自動飛行、位置情報の送信、映像伝送を安定して実行できることが確認されています。

地上基地局は、主に地上付近にいる人や車へ電波を届けるように設計されています。

一方、ドローンが飛行する上空では、地上向け通信網だけでは安定した接続を維持できない場所があります。

成層圏から広い範囲へ電波を届けるHAPSが実用化されれば、次の用途へ展開できる可能性があります。

  • 災害現場の被害状況確認
  • 孤立地域への物資輸送
  • 離島や洋上の監視
  • 山間部のドローン物流
  • 送電線や道路の点検
  • 山林や農地の監視
  • 船舶や無人機との通信

HAPSがスマートフォンだけでなく、上空を移動する機器へ通信を提供できれば、地上、上空、宇宙をつなぐ3次元通信ネットワークの一部になる可能性があります。

世界初とする成層圏エッジコンピューティング

今回の発表でもう一つ注目されるのが、HAPSを使ったエッジコンピューティングです。

通常、スマートフォンやドローンが取得したデータは、通信ネットワークを経由して地上のデータセンターやクラウドへ送信されます。

処理する場所までの通信経路が長くなると、操作や判断に遅延が発生します。

今回の試験では、HAPS上にモバイルコアと処理用のウェブサーバーを搭載しました。

スマートフォンから送られた情報を地上のクラウドまで送らず、HAPS内部で処理して結果をスマートフォンへ返しています。

HAPS上のサーバーによる応答時間は往復平均68ミリ秒となり、インターネットを経由してクラウドで処理する場合と比べて、通信遅延を40%以上削減したとされています。

ソフトバンクによると、HAPS上にモバイルコアとウェブサーバーを搭載し、HAPS内部で応答処理を完結させた技術検証は世界初です。

ただし、この「世界初」も、2026年8月23日時点の公開情報に基づく同社調査です。

フィジカルAIの通信基盤になる可能性

低遅延通信が重要になる用途の一つが、ロボットやドローンなどを動かすフィジカルAIです。

遠隔地のドローンやロボットから映像やセンサーデータを受け取り、AIが状況を分析して動作を指示する場合、通信の遅れが安全性に影響します。

災害現場、山間部、海上など、地上の計算設備や通信設備を設置しにくい場所で、HAPSが通信とデータ処理の両方を提供できれば、遠隔制御やリアルタイム映像解析に利用できる可能性があります。

ただし、今回確認されたのは技術検証です。

AIによる高度なドローン制御や、複数のロボットを同時に動かす商用サービスが開始されたわけではありません。

2027年以降の商用化へ一段階前進

ソフトバンクは2025年6月、Sceyeへ出資し、日本国内でSceyeのHAPSを利用したサービスを展開する独占権を取得しました。

その後、2026年8月中旬以降に日本上空で試験サービスを行い、2027年以降の商用化を目指す計画を示していました。

今回、日本上空への長距離飛行、一定範囲での滞空、スマートフォン通信、緊急通信、ドローン通信、エッジ処理が実際に確認されました。

予定されていた試験が実施され、複数の主要項目に成功したため、プロジェクトは商用化へ向けて一段階前進したと判断できます。

一方、プロジェクトの段階を「商品化」へ変更できる状況ではありません。

正式な有料サービスの提供は始まっておらず、現在は実証結果を利用して、運用体制と通信品質を改善する段階です。

ソフトバンクの業績へ直結するのか

HAPSが商用化されれば、地上基地局を建設しにくい地域へ通信エリアを拡大できる可能性があります。

災害通信、離島・山間部通信、海上通信、ドローン接続、インフラ点検など、従来の携帯電話サービスとは異なる収益源になる可能性もあります。

一方、今回の発表では、サービス料金、契約企業、提供地域、運用する機体数、売上目標は公表されていません。

HAPSを継続的に運用するには、機体の製造、打ち上げ、飛行管理、地上設備、保守、回収、再投入などの費用も必要です。

実証に成功したことと、採算の取れる通信事業が成立することは同じではありません。

投資判断では、技術実証の成功と事業収益への寄与を分けて確認する必要があります。

商用化までに残る課題

今回の試験によって、日本上空でHAPSを運用できる可能性は示されました。

ただし、継続的な商用サービスには、次の課題が残っています。

  • 数週間から数カ月にわたる連続滞空
  • 台風や季節風など日本特有の気象条件への対応
  • 年間を通じた機体の稼働率
  • 複数機を交代運用する体制
  • 通信エリアと同時接続可能な端末数
  • 5Gや将来の6Gへの対応
  • 地上基地局や衛星通信との連携
  • 航空・電波に関する制度整備
  • 機体の打ち上げ、回収、整備費用
  • 災害時以外の継続的な利用需要

今後確認すべき点

次の変化が、HAPSの商用化とソフトバンクの業績への影響を判断する重要なシグナルです。

  • 日本国内での正式な商用サービス開始
  • 具体的なサービス開始日
  • 提供地域と通信可能範囲
  • 利用料金と契約形態
  • 自治体、官公庁、企業との契約
  • 災害通信サービスへの正式採用
  • ドローン事業者や物流企業との提携
  • 対応するスマートフォンと通信規格
  • 連続滞空期間と年間稼働率
  • 複数機による運用体制
  • HAPS上のエッジ処理を使った商用サービス
  • 設備投資額と年間運用費
  • サービス売上と利益への寄与

空飛ぶ基地局は新しい通信インフラになるか

ソフトバンクとSceyeは、日本上空へHAPSを飛行させ、地上のスマートフォンとドローンへ通信を提供する試験に成功しました。

さらに、HAPS上で情報を処理するエッジコンピューティングによって、通信遅延を低減できる可能性も示しています。

これは「2026年に日本上空で試験する」という計画が、実際の成果へ変わった重要な進展です。

次の分岐点は、試験で確認した技術を、料金を受け取る継続的な通信サービスへ移行できるかどうかです。

未来産業地図では、2027年以降の商用化、提供地域、契約先、運用機数、料金、サービス売上への寄与まで継続して追跡します。

主な根拠資料

ソフトバンク株式会社
「日本初、『空飛ぶ基地局』HAPSの商用化に向けた試験サービスの提供に成功」
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2026/20260902_01/

ソフトバンク株式会社
「成層圏通信プラットフォーム HAPS」
https://www.softbank.jp/corp/philosophy/technology/special/ntn-solution/haps/

ソフトバンク株式会社
「『空飛ぶ基地局』のHAPS、2026年に日本でプレ商用サービス開始」
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2025/20250626_01/

注意事項

本記事は、企業が公開した資料をもとに、技術およびプロジェクトの進展を整理したものです。

今回確認されたのは商用化に向けた試験サービスの成功であり、正式な有料サービスが開始されたわけではありません。

本記事は、特定企業の株式購入、売却その他の投資行動を推奨するものではありません。商用化、契約獲得、収益拡大または株価上昇を保証するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。

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この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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