生成AI時代にHDDが再び重要に 東芝は34TBから2027年の40TB級へ

生成AI時代にHDD

生成AIの普及によって需要が増えているのは、AI計算に使うGPUや先端半導体だけではありません。

AIモデルの学習、画像、動画、音声、センサーデータ、バックアップなど、膨大な情報を保存するストレージも必要です。

高速な処理が必要な領域ではSSDが重要ですが、すべてのデータを高価なSSDだけで保存するとは限りません。大量のデータを長期間、比較的低いコストで保管する用途では、現在もHDDがデータセンターの重要な設備です。

こうした需要を背景に、東芝デバイス&ストレージは大容量ニアラインHDDの開発を進めています。

目次

30~34TBのM12シリーズがサンプル出荷へ

東芝デバイス&ストレージは2026年3月31日、データセンター向け3.5型ニアラインHDD「M12シリーズ」を開発し、30~34TBモデルのサンプル出荷を開始したと発表しました。

M12シリーズでは、前世代より1枚多い11枚の磁気ディスクを搭載しています。

磁気ディスクの基板には、従来のアルミニウムより薄型化しやすく、機械的な安定性に優れるガラスを採用。HDD内部には空気より抵抗が小さいヘリウムを充填しています。

さらに、東芝独自のFC-MAMRと、磁気トラックを一部重ねて記録するSMRを組み合わせ、30~34TBの容量を実現しました。

ただし、今回出荷されたものは特定顧客向けのサンプルです。量産品では仕様が変わる可能性があり、本格的な販売開始や採用顧客はまだ公表されていません。

11枚・34TBは40TB級への途中段階

今回のM12シリーズは、それだけで完結する製品ではありません。

東芝デバイス&ストレージは2025年10月、3.5型HDDへ12枚の磁気ディスクを実装する技術の検証に成功したと発表しています。

一般的な10枚構成から、M12シリーズでは11枚へ進み、その次に12枚を実装する計画です。

同社は12枚実装技術とMAMRを組み合わせ、2027年に40TB級のデータセンター向けHDDを市場投入することを目指しています。

今回の34TB級サンプル出荷は、2027年の40TB級製品へ向かうロードマップの途中に位置付けられます。

容量を増やす二つの方法

HDDの容量を増やすには、大きく二つの方向があります。

一つは、磁気ディスク1枚当たりへ記録できるデータ量を増やすことです。MAMRやHAMRなどの記録技術が、この役割を担います。

もう一つは、HDD内部へ搭載する磁気ディスクの枚数を増やすことです。

ただし、単純にディスクを追加すればよいわけではありません。3.5型という決められた筐体の中で、ディスク、磁気ヘッド、アーム、モーターなどを正確に配置する必要があります。

ディスクが増えれば、振動、発熱、消費電力、部品の干渉、ヘッドの位置決め、製造誤差などの問題も大きくなります。

東芝は、部品の薄型化、ディスク積層高さの縮小、ガラス基板、ヘリウム充填、MAMRを組み合わせて、この問題へ対応しています。

SSDがあってもHDDはなくならないのか

SSDは高速で、可動部品がなく、小型化しやすいという強みがあります。一方、データセンターでは、速度だけでなく、1TB当たりの導入費、消費電力、設置スペース、交換頻度を含む総所有コストが重視されます。

頻繁に読み書きするデータはSSD、長期保存やバックアップなどの大容量データはHDDというように、用途によって使い分けられます。

生成AIが扱うデータ量が増え続ければ、高性能なSSDと大容量HDDの両方が必要になる可能性があります。

そのためHDDは、過去の記録装置として消えていくのではなく、AIデータセンターの大容量保存層として進化を続けています。

投資対象として見る際の注意点

このプロジェクトには、投資判断上の制約があります。

開発主体の東芝デバイス&ストレージ株式会社は非上場企業です。親会社の株式会社東芝も2023年に上場廃止となっており、このHDD開発へ株式市場から直接投資することはできません。

また、40TB級HDDについては市場投入目標が示されている段階で、正式な型番、価格、量産規模、採用顧客、売上高や利益への寄与額は公表されていません。

投資の観点では、HDDメーカーだけでなく、ガラス基板、磁気ヘッド、精密部品、製造装置、データセンター設備など、周辺企業への波及を確認する必要があります。

ただし、東芝の公式発表では40TB級製品に使う外部サプライヤー名は明らかにされていません。特定企業が採用されると断定することはできません。

今後確認すべきポイント

今後の重要な確認点は次のとおりです。

  • M12シリーズの顧客認定

  • 30~34TBモデルの量産開始

  • CMR方式28TBモデルの進捗

  • 12枚実装HDDのサンプル出荷

  • 40TB級製品の正式型番

  • 40TB級製品の量産開始時期

  • MAMRとHAMRの使い分け

  • 採用するクラウド事業者

  • 生産能力と製造拠点

  • 1TB当たりの消費電力

  • HDD事業の収益への寄与

  • 部材・製造装置を供給する企業

40TB級HDDは2027年に市場へ出るのか

東芝の大容量HDD開発は、12枚実装の検証だけにとどまっていません。

11枚の磁気ディスクを搭載した30~34TBのM12シリーズは、すでに顧客向けサンプル出荷の段階へ進みました。

次の焦点は、顧客評価を通過して量産へ移行できるか、12枚実装とMAMRを組み合わせた40TB級製品を2027年に投入できるかです。

生成AIが生み出す膨大なデータを、どの記録装置が、どのコストで保存するのか。

未来産業地図では、M12シリーズの量産、12枚実装品のサンプル出荷、40TB級HDDの正式発表まで継続して追跡します。

主な根拠資料

東芝デバイス&ストレージ「SMR方式で30~34TBを実現したニアラインHDDのサンプル出荷開始について」
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/company/news/news-topics/2026/03/storage-20260331-1.html

東芝デバイス&ストレージ「業界初、磁気ディスク12枚実装の検証に成功」
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/company/news/news-topics/2025/10/storage-20251014-1.html

東芝「共鳴型マイクロ波アシスト磁気記録向け『スピントルク発振素子』の発振状態を解明する世界初の評価手法を開発」
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/26/2601-01.html

東芝デバイス&ストレージ「当社ストレージ製品の概要」
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/storage/about-our-storage-products/overview.html

東芝デバイス&ストレージ「基本データ」
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/company/about/profile.html

動画で見る

YouTubeで動画を見る

この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA



日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次