いすゞが2027年度に始めようとしているもの
いすゞ自動車は、2027年度までにレベル4自動運転技術を利用したトラック・バス事業を開始する計画です。
ただし、一般道路のどこでも無人走行できる商用車を一斉に販売する計画ではありません。
最初に想定されているのは、走行条件を限定しやすい次の用途です。
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日本の高速道路を使った大型トラックの幹線輸送
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北米の物流拠点間を結ぶ中型トラック輸送
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日本国内の路線バス
レベル4は、設定された運行設計領域の中でシステムが運転を担う自動運転です。対象道路、速度、天候などの条件から外れた場所まで、無条件に自動運転できることを意味しません。
トラックとバスでは難しさが違う
大型トラックの幹線輸送では、高速道路と物流拠点を結ぶ運行が有力です。
経路を固定し、自動運転に向いた道路区間へ運行範囲を限定できれば、複雑な市街地を最初からすべて自動化する必要がありません。長距離区間を自動運転に任せ、物流拠点から配送先までを人が担当する運用も考えられます。
一方、路線バスは決められた経路を走りますが、技術的には簡単ではありません。
停留所へ正確に寄せて停車し、乗客の乗降を確認し、自転車、歩行者、路上駐車、一般車両へ対応する必要があります。急加速や急制動を避け、立っている乗客の安全も守らなければなりません。
そのため、トラックとバスでは、同じレベル4でも必要な車両制御、認識、安全対策、運行サービスが異なります。
用途ごとに協業先を分ける
いすゞは、自社だけですべての自動運転技術を開発するのではなく、用途ごとに異なる企業と協業しています。
大型トラックの幹線輸送ではApplied Intuitionと共同開発を進めています。同社の開発基盤やシミュレーション技術を利用し、自動運転ソフトウェアの開発工程と検証能力を強化します。
路線バスではTIER IVと資本・業務提携しています。いすゞは2024年にTIER IVへ60億円を出資し、Autowareを利用したレベル4路線バスと、事業者向けサービスの開発を進めています。
北米のミドルマイル輸送ではGatikと協業し、いすゞの中型トラック用シャシを自動運転物流へ供給する計画です。
さらにForetellixのシナリオ生成技術を利用し、危険場面や異常条件を含む多数の走行条件で安全性を検証します。
この役割分担から見えるのは、いすゞが単なる自動運転車の開発ではなく、複数用途へ展開できる事業基盤を構築しようとしていることです。
いすゞの強みは商用車を知っていること
自動運転ソフトウェアだけでは、商用車の事業は成立しません。
大型トラックは積載量によって車両重量や制動距離が変わります。長時間走行に耐える車両設計、故障時の対応、整備拠点、交換部品の供給も必要です。
バスでは、乗客を乗せた状態での滑らかな制御や、運休を防ぐ保守体制が求められます。
いすゞには、商用車の車両制御、顧客の運行条件、保守・整備、販売網に関する蓄積があります。海外の自動運転企業から技術を導入するだけでなく、その技術を実際に稼働できる商用車へ組み込めるかが重要です。
車両販売から継続収益型サービスへ
このプロジェクトを投資判断の材料として見る場合、重要なのは「自動運転車が完成するか」だけではありません。
注目すべきなのは、自動運転によって、いすゞの収益構造が変化するかどうかです。
従来の中心は、車両販売と販売後の部品・整備です。自動運転ソリューションでは、これに次の収益機会が加わる可能性があります。
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自動運転対応車両の販売・リース
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自動運転ソフトウェアの利用料
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遠隔監視サービス
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運行管理サービス
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コネクテッドサービス
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保守・整備契約
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ソフトウェア更新
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物流事業者向けの導入支援
継続課金型の契約を獲得できれば、車両を販売した時点だけでなく、運行期間中にも収益が発生します。
ただし、現時点でいすゞは、自動運転事業単独の売上目標、サービス料金、導入台数を公表していません。
また、2030年までの総額1兆円規模のイノベーション投資は、自動運転だけの投資額ではありません。コネクテッドサービスやカーボンニュートラル関連を含む全体の投資枠であり、1兆円を自動運転事業だけに投じるという意味ではない点に注意が必要です。
自動運転は導入費用を回収できるか
商用車の顧客が自動運転を導入するかどうかは、先進性ではなく採算性で決まります。
車両価格やサービス料金が高くても、運転手不足を補い、稼働時間を延ばし、事故や運休を減らせるなら導入価値があります。
反対に、遠隔監視者を車両ごとに配置しなければならない場合や、自動運転できる道路区間が短い場合は、十分な費用削減につながらない可能性があります。
事業化の成否を判断するには、遠隔監視者1人が何台を担当できるのか、自動運転区間が輸送全体の何割を占めるのか、既存車両と比べた総保有コストがどの程度になるのかを確認する必要があります。
これから確認すべき変化
今後、特に重要になるのは次の情報です。
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公道実証から有償サービス実証への移行
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物流会社・バス事業者との具体的な契約
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2027年度に開始するサービスの地域と運行区間
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自動運転車両の導入台数
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遠隔監視の運用方式
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自動運転対応車両の価格
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月額・従量制などサービス料金の仕組み
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Applied Intuition、TIER IV、Gatikとの役割分担
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安全認可の取得
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自動運転事業による売上高と利益への寄与
2027年度に少数の実証車両を有償運行するだけなのか、複数顧客へ展開できる標準サービスとして開始するのかでは、事業価値が大きく異なります。
商用車メーカーから輸送サービス企業へ変われるか
自動運転は、いすゞにとって車両へ追加する一機能ではありません。
車両販売を中心とするメーカーから、車両、ソフトウェア、遠隔監視、運行管理、保守を一体で提供する輸送ソリューション企業へ変わる可能性を持つ事業です。
一方で、安全性の証明、認可、導入費用、運行事業者との責任分担など、事業化までに解決すべき問題は残っています。
未来産業地図では、2027年度の事業開始に向け、公道実証、提携企業の役割、顧客企業との契約、導入台数、料金体系、収益への寄与を継続して追跡します。
※本記事は公開資料をもとに、技術とプロジェクトの進展を整理したものです。特定企業の株式購入や投資を推奨するものではありません。

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