発電効率30%超へ 長州産業とカネカが挑む国産タンデム太陽電池の量産化

長州産業とカネカが挑む国産タンデム太陽電池の量産化

ペロブスカイト太陽電池という言葉を聞く機会が増えました。

軽く、薄く、曲げられるフィルム型太陽電池は、従来の重いシリコン太陽電池を設置しにくかった建物の壁や曲面にも導入できる可能性があります。

しかし、ペロブスカイト太陽電池の次の競争は、軽さだけではありません。

日本では、ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池を重ね、同じ面積からより多くの電力を得る「タンデム太陽電池」の大型化と量産技術開発が始まっています。

NEDOは2026年2月6日、グリーンイノベーション基金事業「次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業」において、長州産業株式会社と株式会社カネカの研究テーマを採択したと発表しました。

事業期間は2025年度から2030年度までです。

目標は、1平方メートル以上の大型モジュールで変換効率30%以上、住宅用発電コスト12円/kWh以下です。

これは研究用の小さなセルで高い記録を競うだけではなく、住宅や建物へ設置できる大きさで性能を維持し、量産できる製造工程を作るプロジェクトです。

目次

■ タンデム太陽電池とは何か

太陽光には、波長の異なるさまざまな光が含まれています。

一般的なシリコン太陽電池だけでは、すべての波長を効率よく電力へ変換することはできません。

タンデム太陽電池は、吸収できる波長が異なる太陽電池を重ね、それぞれの層に得意な光を担当させます。

今回開発する方式では、上部にペロブスカイト太陽電池、下部にシリコン系太陽電池を配置します。

上部のペロブスカイト層を通過した光を下部のシリコン層でも利用することで、単独の太陽電池より高い変換効率を目指します。

簡単に表現すれば、一種類の網ですべての光を捕まえるのではなく、目の細かさが異なる二種類の網を重ねて利用する仕組みです。

■ 長州産業が目指す大型化と耐久性

長州産業は、「大面積成膜プロセスに基づくペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池モジュール量産化技術開発」に取り組みます。

目標は、1平方メートル以上の大型モジュールで変換効率30%以上、耐久性20年以上です。

ペロブスカイト太陽電池は、小さな試験用セルで高い性能が得られても、面積を大きくすると塗布のむらや微細な欠陥が発生し、性能が低下する可能性があります。

住宅や事業用設備へ導入するには、広い面積へ均一にペロブスカイト層を形成する技術が必要です。

長州産業は、太陽電池モジュールを国内で製造してきた経験に加え、有機ELや半導体関連の成膜装置、真空装置なども手掛けています。

太陽電池と製造装置の両方に関わってきた技術を、大型タンデム太陽電池の量産工程へ利用できるかが注目点です。

■ カネカは2028年度の製品販売を計画

カネカは、自社が生産するヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池へ、ペロブスカイト太陽電池を重ねる技術を開発します。

住宅の屋根や壁、ZEH、ZEBなどを想定した実証を行い、2028年度からタンデム型ペロブスカイト太陽電池の製品販売を開始する計画です。

カネカは、瓦と太陽電池を一体化したモジュールも開発しています。

屋根の上へ別の架台とパネルを載せるのではなく、屋根材そのものへ発電機能を持たせることができれば、住宅の外観や施工方法を含めた新しい市場を作れる可能性があります。

同社は、将来的に変換効率40%以上にも挑戦するとしています。

ただし、40%は現在の大型製品で達成済みの性能ではなく、将来的な研究開発目標です。

■ 中国製太陽光パネルと何が違うのか

現在の太陽光パネル市場では、中国企業が大きな生産能力と価格競争力を持っています。

日本企業が一般的なシリコン太陽電池を同じ方法で大量生産し、価格だけで競争するのは簡単ではありません。

タンデム太陽電池は、単位面積当たりの発電量、住宅との一体化、耐久性、施工性などで付加価値を作り、単純な低価格競争とは異なる市場を目指す技術です。

特に日本では、住宅や建物の屋根面積が限られます。

設置面積を増やせない場所でも、変換効率が上がれば、同じ屋根から得られる電力量を増やせる可能性があります。

日本企業が、材料、成膜装置、住宅部材、施工、品質保証までを組み合わせられるかが重要になります。

■ 500MWの量産構想は何を意味するのか

NEDOは、2030年度までに500MW以上規模の量産化構想を持つ企業2社を採択したと説明しています。

500MWは、研究用の試験設備ではなく、商用市場への供給を想定する規模です。

ただし、採択された時点で500MWの工場が完成しているわけではありません。

今後、製造プロセスを確立し、実証結果を確認したうえで、量産設備への投資、工場建設、顧客獲得へ進む必要があります。

設備投資額、工場の建設場所、稼働時期、年間生産能力は、今後の公式発表で確認すべき項目です。

■ 量産までに残る課題

タンデム太陽電池の性能は、変換効率だけでは判断できません。

第一の課題は大型化です。

小さなセルで得られた性能を、1平方メートル以上のモジュールでも維持する必要があります。

第二の課題は耐久性です。

住宅用太陽電池は、強い日差し、雨、湿気、高温、低温、温度変化に長期間耐えなければなりません。

第三の課題は量産速度と歩留まりです。

高性能な製品を作れても、製造時間が長く、不良品が多ければ価格を下げられません。

第四の課題は発電コストです。

変換効率が高くても、製品価格や施工費が高すぎれば、導入による経済的な利点が小さくなります。

第五の課題は正式採用です。

住宅メーカー、建材メーカー、発電事業者などが採用し、継続的な販売へ進まなければ事業として完成しません。

■ 今後確認すべき進捗

本プロジェクトでは、次の項目を継続して確認します。

・1平方メートル以上の大型モジュール完成
・大型モジュールでの変換効率30%達成
・耐久性20年以上の検証
・屋根、壁、地上、営農型での実証開始
・カネカの2028年度製品販売開始
・量産設備への投資額と工場建設
・年間500MW以上の量産体制
・住宅メーカーや建材メーカーによる正式採用
・住宅用発電コスト12円/kWh以下の達成
・販売量と参加企業の業績への貢献

■ 日本の太陽電池産業は再び競争力を持てるか

ペロブスカイト太陽電池が日本発の有望技術として注目されても、研究成果だけでは世界市場を取ることはできません。

高い性能を持つ大型製品を作り、安定して量産し、適正な価格で販売し、長期間保証するところまで進む必要があります。

長州産業は、国内の太陽電池製造と成膜装置の技術を生かして大型化と量産へ挑みます。

カネカは、シリコン太陽電池と住宅建材の技術を組み合わせ、2028年度の製品販売を目指します。

この2社が変換効率30%以上と量産化を実現すれば、日本の太陽電池産業が価格だけではない競争力を取り戻す可能性があります。

一方、現段階では開発・実証事業が始まった段階です。

未来産業地図では、期待だけで完成した技術と判断せず、大型化、実証、製品販売、量産、正式採用、業績貢献まで継続的に追跡します。

【参考資料】

NEDO
次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101909.html

長州産業株式会社
NEDOグリーンイノベーション基金事業への採択
https://choshu.co.jp/release20260206/

株式会社カネカ
次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業への採択
https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2026/e7e74r00000008ux-att/nr2602061.pdf

【記事末尾の注意書き】

本記事は、企業および公的機関が公開した資料を基に、技術開発と事業化の進捗を整理したものです。特定企業の株式その他の金融商品の購入を推奨するものではなく、将来の業績、株価、技術の実用化を保証するものではありません。投資判断は、ご自身の責任で最新の開示資料などをご確認ください。

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カネカ(4118)2026-09-11買付5,879円1保有中売買記録詳細

この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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