生成AIの普及によって、AIデータセンターの電力問題はGPUそのものだけではなくなっています。大量の演算チップの間でデータを移動させる通信にも、膨大な電力が必要になるためです。
この課題に対し、NTTグループ、ジャパンセミコンダクター、古河電気工業、新光電気工業は、光チップレットを使った光電融合デバイスの量産技術開発を本格化します。4社による共同提案は、NEDOの先端半導体製造技術開発事業に採択されました。
今回の発表はPEC-2の量産開始ではない
今回の発表は、NTTが2026年度中の商用提供を予定しているPEC-2搭載スイッチが、直ちに量産開始するという意味ではありません。
一方で、研究室で成立した光電融合技術をAIデータセンターで使える部品として安定供給するには、製造、検査、光接続、半導体パッケージ実装までを量産工程として確立する必要があります。今回の採択は、その「量産の壁」を越えるための取り組みです。
光チップレットとは何か
光チップレットは、光を扱う集積回路と電子回路を高密度に組み合わせ、CPUやGPUなどの処理チップ間を光で接続する技術です。従来の電気配線だけでデータを送る場合、通信速度や距離が伸びるほど消費電力と発熱が増えます。光を使えば、より高速かつ大容量の通信を、低い消費電力で実現できる可能性があります。
4社が分担する量産工程
NTTイノベーティブデバイスは製造・検査・実装技術、ジャパンセミコンダクターはシリコンフォトニクスの量産技術、古河電工は化合物光半導体の量産技術、新光電気工業は実装と工程内検査を含む量産プロセスを担当します。
素材、光半導体、シリコンフォトニクス、実装、検査を別々に開発するだけでは量産品にはなりません。部品同士の接続精度、熱への耐性、歩留まり、検査方法を一体で固める必要があります。今回の4社連携は、日本国内でその工程をつなぐ試みです。
PEC-2との関係は
既存のPEC-2は、データセンターのラック間やボード間で使う光電融合スイッチを主な対象としています。今回の光チップレット量産技術は、半導体パッケージ間やチップ間を光で接続する、さらに集積度の高い領域を見据えています。
両者は同じ光電融合の延長線上にありますが、今回の発表だけで「PEC-2向けの量産ラインが確定した」と断定することはできません。
ここからは考察です
PEC-2の商用提供が「製品として市場に出せるか」の確認だとすれば、今回の量産技術開発は「需要が増えた際に国内で安定供給できるか」の準備です。
AIデータセンターの投資が続けば、電力を抑えながら通信量を増やす技術の重要性は高まります。その際、光電融合デバイスを設計できるだけでは十分ではありません。量産歩留まり、検査、実装、供給能力まで含めて整えられるかが、事業化の分かれ目になります。
今後確認したい三つの点
第一は、実工場への適用を見据えたパイロットラインがいつ整備され、どの程度の生産性を実証できるかです。今回の目標は研究開発時点と比べて10倍以上の生産性向上ですが、量産品質と歩留まりは今後の確認事項です。
第二は、PEC-2搭載スイッチを含む具体的な顧客採用です。AIデータセンターや大手クラウド事業者で採用実績を作れるかが、量産投資の必要性を左右します。
第三は、海外勢との競争です。光電融合とCo-Packaged Opticsの分野では、米国の半導体・ネットワーク企業も開発を急いでいます。日本勢が部材だけで終わらず、製造・実装・検査を含む供給網として主導権を持てるかが問われます。
まとめ
今回のNEDO採択は、PEC-2そのものの量産開始を示す発表ではありません。しかし、AIデータセンター向け光電融合技術を、試作品から安定供給できる製品へ移すための国内製造基盤づくりとして重要です。
NTTのIOWN構想は、通信サービスの構想から、半導体、光デバイス、実装、検査をつなぐ製造プロジェクトへ広がり始めています。今後は、パイロットラインの進捗、PEC-2の顧客採用、量産能力と収益化への寄与を追う必要があります。
※本記事は企業・技術開発の動向を整理するものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。

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