石炭灰が繊維とレアアースに変わる BASHFIBER量産化の現在地

石炭灰が繊維とレアアースに変わる

石炭火力発電所から発生する石炭灰を、高機能な連続長繊維へ転換するBASHFIBERの開発が、量産化を見据えた段階へ進んでいます。

BASHFIBERは、新日本繊維株式会社が開発する環境配慮型高機能リサイクル繊維です。発電所などで発生する石炭灰やスラグを高温で溶かし、髪の毛より細い繊維として連続的に引き出します。

単に廃棄物を再利用するだけではありません。高強度、耐熱性、耐薬品性などを備え、建築、土木、自動車、住宅設備、風力発電などで使われるガラス繊維を代替できる可能性があります。

さらに2026年4月、新日本繊維はBASHFIBERの製造工程において、石炭灰に含まれるレアアース元素を取り出す基礎研究に成功したと発表しました。

石炭灰から繊維を作りながらレアアースも回収できれば、一つの原料から複数の価値を生み出す新しい資源循環モデルになる可能性があります。

目次

量産化を支える3社

BASHFIBERの事業化には、新日本繊維、電源開発株式会社(J-POWER)、日本板硝子株式会社が関わっています。

新日本繊維は、石炭灰の溶融、紡糸、繊維表面を保護するバインダー、複合材料などの研究開発を担当しています。

J-POWERは新日本繊維へ出資し、茅ケ崎研究所内に量産化検証設備を設置する場所を提供しています。発電事業から発生する石炭灰を、新たな産業素材へ転換する役割も期待されます。

日本板硝子は、ガラスや特殊ガラス繊維で蓄積した技術と市場知見を持ち、BASHFIBERの事業化を共同で検討しています。

年間1万トンの量産構想

新日本繊維はNEDOのディープテック・スタートアップ支援事業に採択され、J-POWER茅ケ崎研究所に量産化検証設備を建設しました。

検証設備は2025年12月に完成しました。NEDOの資料では、年間50~100トン規模のサンプル製造と市場検証を行い、将来的には年間1万トン規模の量産工場につなげる構想が示されています。

現段階で完成したのは年間1万トンの商用工場ではありません。量産に必要な電気溶融炉、紡糸用ブッシング、原料となる石炭灰の成分管理、バインダーなどを検証するための設備です。

完成直後に発生した火災

量産化には重要な確認事項があります。

2026年1月4日午前4時10分ごろ、茅ケ崎研究所内に設置されたBASHFIBER量産化検証設備で火災が発生しました。

消防機関によって同日午前6時28分ごろに鎮火が確認され、負傷者や研究所外への影響は確認されていません。

J-POWERは原因を調査し、必要な対策を実施すると発表しました。しかし、2026年8月23日時点では、設備の復旧完了や検証運転の再開を示す公式発表は確認できません。

したがって、BASHFIBERは「量産開始済み」ではなく、「量産化検証設備は完成したものの、火災後の復旧と運転再開を確認する段階」にあります。

宇宙・医療・原子力への可能性

BASHFIBERには、機能性物質を加えることで新たな性能を持たせる研究も進められています。

放射線遮蔽機能を持つBASHFIBER USは、航空機や人工衛星、宇宙施設、医療設備、原子力関連施設などへの利用が期待されています。

ただし、用途ごとの安全性、耐久性、遮蔽性能、重量、製造コスト、認証取得については、今後の実証と顧客評価が必要です。

今後確認すべき進捗

最も重要なのは、量産化検証設備がいつ復旧し、実際の連続生産試験を再開できるかです。

その後は、年間50~100トン規模で安定した品質の繊維を製造できるか、ガラス繊維と比較して価格競争力を持てるか、具体的な採用企業や用途が公表されるかが焦点になります。

レアアース回収についても、今回公表されたのは基礎研究の成功です。回収できる元素の種類、石炭灰1トン当たりの回収量、純度、回収コスト、商用設備への組み込み方法はまだ明らかになっていません。

石炭灰から高機能繊維を作り、さらにレアアースまで回収する構想が実現すれば、日本国内で発生する副産物を、新素材と重要鉱物の供給源へ変えられる可能性があります。

未来産業地図では、設備の復旧、試験生産、サンプル提供、採用企業、レアアース回収技術、年間1万トン規模の量産工場計画まで継続して確認します。

根拠資料

新日本繊維株式会社
「石炭灰繊維製造に伴うレアアース元素の取り出しに成功しました。」
https://nipponfc.com/news/2774

電源開発株式会社
「BASHFIBER量産化検証設備の落成式を実施しました」
https://www.jpower.co.jp/news/2025/12/news251212.html

電源開発株式会社
「茅ヶ崎研究所構内 BASHFIBER量産化検証設備における火災発生について」
https://www.jpower.co.jp/news/2026/01/oshirase260105.html

電源開発株式会社
「Jパワー、日本板硝子、新日本繊維による事業化に向けた共同検討について」
https://www.jpower.co.jp/news/2024/06/news240628_1.html

NEDO
「石炭灰リサイクル繊維生産設備の落成式」
https://www.nedo.go.jp/ugoki/ZZ_101455.html

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この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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