積水化学、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を事業化へ—2027年度に100MW量産

フィルム型ペロブスカイト太陽電池

積水化学工業が、軽くて曲げられる「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」の事業化を本格化させています。

同社が2026年5月21日に発表した中期経営計画では、2026年度に既存設備を使った幅1メートル製品の供給を開始し、2027年度から100MW規模の新生産ラインを稼働させる計画が示されました。

研究開発中心だった日本の次世代太陽電池が、いよいよ量産と市場形成の段階へ移ろうとしています。

目次

ペロブスカイト太陽電池とは

ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽く、柔軟性を持たせられる次世代型の太陽電池です。

一般的なシリコン系太陽光パネルは重量があるため、建物の耐荷重や設置面の形状によっては取り付けが難しい場合があります。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池であれば、これまで太陽光発電に利用しにくかった場所への設置が期待できます。

例えば、次のような用途です。

  • 工場や倉庫など、荷重制限のある屋根

  • ビルの壁面

  • 曲面を持つ構造物

  • 仮設施設や移動体

  • 従来型パネルを設置しにくい公共施設

既存の太陽光発電と単純に置き換わるのではなく、これまで使えなかった面を発電場所に変える技術として注目されています。

2027年度に100MW量産ラインを稼働

積水化学工業は、1メートル幅のフィルム型ペロブスカイト太陽電池について製造技術を確立し、2026年度から製品供給を開始する方針です。

続いて、2027年度から100MW規模の生産ラインを稼働させる計画を進めています。

同社は2026~2028年度の設備投資計画のうち、フィルム型ペロブスカイト太陽電池事業に1,000億円を振り向ける方針も示しました。

100MWラインの本格稼働後は、早期に1GW規模の供給体制を構築することを視野に入れています。1GW規模まで拡大した場合の売上高として、1,000億円規模を目標に掲げています。

これは単なる研究成果の発表ではありません。設備投資、製品供給、生産能力、売上目標が具体的に示されたことで、事業化の確度が一段高まったと考えられます。

日本が強みを持つ理由

日本にとって重要なのは、ペロブスカイト太陽電池の主要原料であるヨウ素を国内で調達できる点です。

資源エネルギー庁によると、日本はヨウ素の世界生産で約30%のシェアを持つ世界第2位の産出国です。原材料を海外に全面依存せず、国内を中心とした供給網を構築できる可能性があります。

また、積水化学工業はフィルムの封止技術や塗工技術を保有しています。材料を薄く均一に形成し、湿気などから保護しながら耐久性を高める技術は、フィルム型太陽電池の量産に欠かせません。

日本の素材技術と製造技術を生かせる分野であることが、この技術の大きな特徴です。

国も2040年までに約20GWの導入を目指す

政府は、ペロブスカイト太陽電池を次世代の国産エネルギー技術として位置付けています。

資源エネルギー庁は、2030年までの早い段階でGW級の生産体制を構築し、2040年までに国内で約20GWを導入する目標を示しています。

研究開発だけでなく、生産設備への支援や公共部門での需要創出も進める方針です。

企業の量産投資と政府の導入政策が同時に進むため、今後は実証件数だけでなく、受注量、生産歩留まり、発電効率、耐久性、施工費用の変化が重要になります。

投資家が確認したいポイント

積水化学工業にとって、ペロブスカイト太陽電池は将来の成長事業候補です。しかし、量産計画がそのまま利益につながるとは限りません。

今後、特に確認したいのは次の点です。

  • 100MWラインが計画どおり稼働するか

  • 発電効率と耐久性が向上するか

  • 大量生産によって製造原価を下げられるか

  • 公共施設や工場屋根などから継続的な受注を得られるか

  • 補助金に依存せず採算を確保できるか

  • 中国、欧州、韓国などとの競争で優位性を維持できるか

  • 使用済み製品の回収・リサイクル体制を構築できるか

同社は100MW生産能力が本格稼働する段階での黒字化を見込み、1GW規模では事業としての収益基盤確立を目指しています。ただし、現時点では量産開始前後の段階であり、投資負担や技術上の課題も残っています。

未来産業地図の見方

今回の発表は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池が「研究」から「量産準備」へ進んだことを示す重要なシグナルです。

当サイトでは、実用化までの距離を「NEXT」、情報確度を企業の正式な経営計画に基づく「LV5」と評価します。

今後、2026年度の製品供給、2027年度の100MWライン稼働、さらに1GW規模への追加投資が計画どおり進むかを継続して追跡します。

日本の素材・製造技術から生まれた薄くて曲がる太陽電池が、屋根や壁を新しい発電場所へ変えられるのか。積水化学工業の量産化は、その将来を左右する大きな一歩になります。

※本記事は公開情報に基づく情報提供を目的としたもので、特定企業の株式その他の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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