空中に映像が浮かぶ「ASKA3D」は儲かるか? アスカネット、赤字事業を2028年度売上8億円へ

空中に映像が浮かぶ「ASKA3D」は儲かるか
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何もない場所に人やキャラクターが浮かぶ

ディスプレイもスクリーンも見当たらない空間に、人やキャラクター、操作ボタンが浮かんで見える。

SF映画の演出に見えますが、この空中結像技術はすでに製品化されています。

広島県に本社を置くアスカネットは、独自の光学プレートを使った空中ディスプレイ「ASKA3D」を開発・販売しています。

専用の眼鏡やヘッドセットを装着する必要はありません。センサーと組み合わせれば、空中に表示されたボタンを画面へ触れずに操作することもできます。

受付、店舗、観光施設、展示会、製薬・医療現場など、さまざまな用途が考えられます。

しかし、技術的に映像を浮かせられることと、事業として利益を出せることは別の問題です。

アスカネットは写真関連サービスから生まれた会社

アスカネットは、空中ディスプレイだけを開発する企業ではありません。

同社の主力事業は、葬儀社向けの遺影写真加工などを行うフューネラル事業と、写真館や個人向けに写真集を提供するフォトブック事業です。

2026年4月期の連結売上高は71億276万円でした。

このうち、フューネラル事業の売上高は33億139万円、フォトブック事業は36億9,521万円です。

一方、空中ディスプレイ事業の売上高は1億502万円で、連結売上高に占める割合は約1.5%でした。

現時点では、空中結像がアスカネット全体の収益を支える主力事業になっているわけではありません。

ASK​​A3Dはどのように映像を浮かせるのか

ASKA3Dでは、微細なミラー構造を持つ特殊な光学プレートを使用します。

液晶モニターなどから出た光がプレート内部で反射し、プレートを挟んだ反対側の空間へ集まることで、そこに映像が存在するように見えます。

壁や霧へプロジェクターで投影する方式ではありません。

VRやARのように、利用者が専用機器を装着する必要もありません。

複数の人が同じ空中像を見ることができ、現実の施設や製品と組み合わせて使用できます。

アスカネットは、高品位なガラス製ASKA3Dプレートと、比較的低価格で製造できる樹脂製プレートを展開しています。

非接触操作だけでは市場を作れなかった

空中ディスプレイは、新型コロナウイルスの感染拡大期に、画面へ触れない操作方法として注目されました。

しかし、感染対策だけを目的として高価な表示装置を導入する需要は、継続的な大市場にはなりませんでした。

空中像は見る人に強い印象を与えますが、「珍しい」「未来的」という理由だけでは、企業が継続的に設備投資を行う根拠として不十分です。

アスカネット自身も、空中ディスプレイ市場は国内外ともに黎明期で、本格的な市場形成には至っていないと説明しています。

さらに、有力な競合企業が少ない一方で、自社だけで市場を作ることに苦戦していると認識しています。

競合が少ないことは、必ずしも大きな商機が確立していることを意味しません。需要自体がまだ十分に形成されていない可能性も考える必要があります。

売上約1.05億円に対して損失約2.84億円

2026年4月期の空中ディスプレイ事業は、売上高1億502万円でした。

これに対して、セグメント損失は2億8,392万円です。

前年の損失5億3,310万円からは縮小しましたが、売上規模を大きく上回る損失が続いています。

アスカネットは、研究開発費を抑制し、技術開発センターを閉鎖するなど、事業コストの見直しを進めました。

それでも、現状では空中ディスプレイ事業が利益を生む段階へ到達したとは判断できません。

投資判断では、「将来性のある技術を持っている」という説明だけでなく、研究開発費を含む事業費用を販売利益で回収できるかを確認する必要があります。

プレート販売から完成品・サービスへ転換

これまでのアスカネットは、空中結像に必要なASKA3Dプレートの販売を事業の中心としてきました。

しかし、光学プレートを購入した企業が、自らディスプレイ、筐体、センサー、映像コンテンツを組み合わせて製品化するには専門知識が必要です。

これが導入の障壁になります。

アスカネットは事業方針を変更し、プレートだけでなく、筐体やコンテンツを組み合わせたパッケージ製品の販売を強化しています。

代表例が「浮空ライブステージ」です。

人物やVTuberなどのキャラクターを空中に表示し、映像、音声、センサーなどを組み合わせて、受付や案内、展示、エンターテインメントに利用します。

単なる光学部品から、利用目的が分かる完成品へ近づける戦略です。

AI接客との組み合わせは有力な用途になるか

アスカネットは2026年5月、エボルブと共同で「浮空ライブステージ」を使ったAI受付ソリューションを発表しました。

空中に表示された人物やキャラクターが、利用者の質問を認識し、AIによって回答する構成です。

従来のデジタルサイネージは、事前に用意した映像を一方向に表示することが中心でした。

AIを組み合わせれば、利用者ごとに異なる質問へ回答し、施設案内、商品説明、多言語対応などを行える可能性があります。

ただし、空中に表示する必要性が明確でなければ、一般的なディスプレイやタブレットとの価格競争になります。

AI接客との組み合わせが成功するかどうかは、空中像の目新しさではなく、利用率、案内業務の削減時間、成約率、顧客満足度など、導入企業が効果を数値で確認できるかにかかっています。

製薬・医療現場で採用事例

2026年7月には、ASKA3Dが日立プラントサービスの手技AI解析ソリューション「SHUGY」に採用されたことが発表されました。

製薬・医療分野では、作業手順の正確性に加えて、設備や操作画面を衛生的に保つことが求められます。

空中に表示された操作画面を利用すれば、物理的な画面へ直接触れずにシステムを操作できます。

これは、単に未来的な演出を行う用途とは異なり、接触を減らすこと自体に業務上の意味がある導入例です。

今後、医薬品工場や医療関連施設で同様の採用が広がれば、高付加価値用途の一つになる可能性があります。

ただし、現時点で大規模な受注金額や継続契約が公表されているわけではありません。一つの採用事例と、事業全体の収益化は分けて判断する必要があります。

次の柱はライセンス事業

アスカネットが収益化に向けて重視しているもう一つの方法が、ライセンス事業です。

同社は空中結像に関する特許、プレートの設計、製造ノウハウなどを保有しています。

これらを戦略パートナーへ提供し、他社による製品開発や製造からライセンス収入を得られれば、自社ですべての製品を製造・販売する場合よりも事業を拡大しやすくなる可能性があります。

アスカネットは2028年度までに、ライセンス契約を2025年度の1件から4件へ増やす目標を掲げました。

重要なのは契約数だけではありません。

契約一時金だけなのか、製品の販売数量に応じて継続的な使用料を受け取れるのかによって、収益への影響は大きく異なります。

契約相手、対象地域、製品分野、契約期間、収益の計上方法が今後の確認点です。

2028年度の売上目標は8億円

アスカネットは、中期経営計画の最終年度となる2028年度に、空中ディスプレイ関連事業の売上高を8億円へ拡大する目標を示しました。

2025年度の比較基準は3億7,000万円です。

ただし、これらの金額には、2026年度から空中ディスプレイ事業へ移管されるグループ会社BETの売上が含まれています。

BETはVTuber事務所「Razzプロダクション」などを運営しています。

そのため、2028年度の売上8億円を、ASKA3Dプレートや空中ディスプレイ製品だけの売上目標と解釈してはいけません。

光学製品、パッケージ製品、ライセンス、VTuber関連事業などを組み合わせた目標です。

年間30件のパッケージ販売を目指す

アスカネットは、1件300万円以上となるパッケージ製品の販売を、2025年度の年間6件から2028年度には年間30件へ増やす計画です。

最低基準の300万円で単純計算すると、30件で9,000万円です。

実際の販売単価が300万円を上回れば売上は増えますが、年間30件を達成しても、それだけで8億円の売上目標へ届くわけではありません。

ASKA3Dプレートの供給、ライセンス収入、BETの事業、その他のパッケージ製品を同時に伸ばす必要があります。

目標達成を判断するには、パッケージ販売件数と事業売上の両方を確認する必要があります。

アスカネットの業績を変える規模になるか

2026年4月期のアスカネットの連結売上高は約71億円です。

2028年度の全社売上高目標は100億円、営業利益目標は8億円、ROE目標は8%です。

空中ディスプレイ関連事業の売上目標8億円は、全社目標の8%に相当します。

目標を達成しても、直ちにアスカネットの主力事業になる規模ではありません。

しかし、現在発生している事業損失を縮小し、利益を生む事業へ転換できれば、全社利益への影響は売上構成比以上に大きくなる可能性があります。

反対に、売上が伸びず研究開発費や販売費が続けば、既存事業が生み出す利益を消費し続けることになります。

投資判断では、8億円という売上目標だけでなく、空中ディスプレイ事業がいつ、どの程度の利益を生み始めるかが重要です。

今後確認すべき点

ASKA3D事業の収益化を判断するには、次の変化を追跡する必要があります。

  • 1件300万円以上のパッケージ製品販売件数

  • 新しい導入企業と導入施設

  • AI受付ソリューションの正式受注

  • 医療・製薬分野での追加採用

  • ライセンス契約数

  • ライセンス契約先と対象製品

  • 継続的なライセンス収入の有無

  • ASK​​A3Dプレートの販売数量

  • ガラス製・樹脂製プレートの製造コスト

  • 空中ディスプレイ事業の損失縮小

  • セグメント黒字化の時期

  • 研究開発費の推移

  • 戦略パートナーとの共同開発

  • 海外での販売・ライセンス展開

  • BETを除いた空中ディスプレイ製品の売上

  • 2028年度売上高8億円の達成状況

技術の面白さより、販売実績を見る段階へ

ASKA3Dは、空中に映像が浮かんで見えるという分かりやすい魅力を持つ技術です。

しかし、アスカネットが空中結像の開発に取り組んでから長い時間が経過している一方、本格的な市場形成には至っていません。

現在は「空中に映像を表示できるか」を確認する研究段階ではありません。

AI接客、製薬・医療、観光、エンターテインメントなど、費用を支払って導入する顧客を増やし、事業損失を縮小できるかを確認する段階です。

プレート販売からパッケージ製品へ、さらにライセンス収入へ事業構造を転換できれば、独自技術が収益へ結び付く可能性があります。

一方、導入事例が単発の展示や実験にとどまれば、2028年度の目標達成は難しくなります。

未来産業地図では、パッケージ製品の販売件数、ライセンス契約、導入企業、セグメント損失、2028年度売上高8億円の達成状況まで継続して追跡します。

主な根拠資料

株式会社アスカネット
「中期経営計画(2026-2028)」
https://www.asukanet.co.jp/contents/ir/pdf/2026/20260609-plan-2026-2028.pdf

株式会社アスカネット
「2026年4月期 決算短信」
https://www.asukanet.co.jp/contents/ir/pdf/2026/20260609-tansin.pdf

株式会社アスカネット
「財務・業績情報」
https://www.asukanet.co.jp/contents/ir/results.html

株式会社アスカネット
「会社情報」
https://www.asukanet.co.jp/contents/company/profile.html

ASKA3D
「製品一覧」
https://aska3d.com/ja/products.html

株式会社アスカネット
「空中に浮かぶAI接客を実現」
https://www.asukanet.co.jp/contents/news/2026/20260526.html

株式会社アスカネット
「日立プラントサービスの手技AI解析ソリューションにASKA3Dを採用」
https://www.asukanet.co.jp/contents/news/2026/20260702.html

注意事項

本記事は、企業が公開した資料をもとに、技術およびプロジェクトの進展を整理したものです。

空中ディスプレイ関連製品はすでに商品化されていますが、市場形成および事業収益化は途上です。

2028年度の売上高8億円は会社が掲げる目標であり、達成を保証するものではありません。また、この数値にはグループ会社BETの売上が含まれます。

本記事は、特定企業の株式購入、売却その他の投資行動を推奨するものではありません。将来の売上拡大、黒字化または株価上昇を保証するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。

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この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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