日本で半世紀ぶりの新金山となるか 鹿児島・山ケ野で金品位46.10g/tを確認

日本で半世紀ぶりの新金山

日本で半世紀ぶりとなる、新たな商業金山が誕生する可能性が注目されています。

舞台は、鹿児島県霧島市周辺にある旧山ケ野金山と、その東側の地域です。

探鉱を進めているのは、世界的な金鉱山会社Newmont Corporationの子会社、カナダのIrving Resources Inc.、日本の住友商事株式会社による共同事業です。

2026年3月2日に公表された試錐結果では、一部の試料から金品位46.10グラム/トンという高い数値が確認されました。

しかし、この段階で「巨大な金鉱床が発見された」「新しい金山の開発が決まった」と判断することはできません。

今回確認されたものは地下から採取した限られた岩石試料の分析結果です。商業採掘に進むには、金を含む鉱脈が地下でどこまで続き、採算の取れる量が存在するのかを確認する必要があります。

目次

■ 山ケ野金山とは

山ケ野金山は、鹿児島県に存在した歴史的な金山です。

17世紀に発見され、江戸時代には国内有数の産金地として知られましたが、1965年に閉山しました。

過去の記録では約50本の金銀鉱脈が確認されたとされています。一方、当時の技術や採掘条件では十分に調査されなかった場所も残されていると考えられています。

現在の探鉱では、旧鉱山の東側や、過去に十分な試錐が行われなかった地下深部を対象に、新たな鉱脈の広がりを調べています。

■ 世界的な金鉱山会社が60%を保有

山ケ野共同事業には、Newmont Corporationの完全子会社であるNewmont Overseas Exploration Limited、Irving Resources、住友商事が参加しています。

公表されている当初持分は、Newmontが60%、Irving Resourcesが27.5%、住友商事が12.5%です。

Newmontは米国に本社を置き、世界各地で金や銅などの鉱山を操業する上場企業です。

Irving Resourcesは日本国内の金銀鉱床探査を中心に活動するカナダの探鉱会社で、現地での地質調査や試錐を進めています。

住友商事は日本企業として事業に参加しています。

世界規模の鉱山開発経験を持つNewmontが過半の持分を保有している点は注目材料です。ただし、参加企業の規模が大きいことと、鉱山開発が成功することは別の問題です。

■ 地下900メートルまで試錐

2025年後半、共同事業は25SY-003と呼ばれる試錐孔を約900.3メートルまで掘削しました。

狙ったのは、AMTと呼ばれる電磁探査で確認された、地下深部の電気抵抗が高い領域です。

このような高抵抗域は、熱水活動によって岩石が珪化し、金銀を含む石英脈が形成された場所と関係している可能性があります。

ただし、電気抵抗が高いだけで金鉱床と断定できるわけではありません。そのため、実際に試錐して岩石を回収し、金や銀の含有量を分析します。

■ 金品位46.10グラム/トンを確認

試錐孔25SY-003では、複数の金鉱化区間が確認されました。

主な結果は次のとおりです。

・4.62メートルで金品位3.55グラム/トン
・その一部0.90メートルで8.91グラム/トン
・別の0.55メートルで10.30グラム/トン
・4.00メートルで6.27グラム/トン
・その一部1.00メートルで23.36グラム/トン
・さらにその一部0.48メートルで46.10グラム/トン

46.10グラム/トンは、岩石1トン当たりに平均46.10グラムの金が含まれていたことを示します。

数値だけを見れば高品位です。しかし、46.10グラム/トンが確認された区間は0.48メートルです。

公式発表では、これらの区間が鉱脈を横切った本当の厚さであるかは、まだ分からないと説明されています。

そのため「46.10グラム/トンの鉱床が広範囲に存在する」と解釈してはいけません。

■ 高品位でも金山とは限らない

鉱山の事業性は、金品位だけでは決まりません。

重要なのは、金を含む鉱石が地下にどれだけ存在し、安定して採掘できるかです。

高品位の鉱脈が存在しても、非常に細い、連続していない、地下深くにあって採掘費用が高いといった場合には、事業化できない可能性があります。

商業開発へ進むには、追加試錐によって次の点を確認する必要があります。

・鉱脈が地下でどの方向に続いているか
・鉱脈の本当の厚さ
・金品位の高い範囲がどれだけ広いか
・推定資源量と確認資源量
・採掘と選鉱に必要な費用
・鉱石から金を回収できる割合
・道路、電力、処理施設などの整備費用
・排水、廃石、尾鉱などの環境対策
・地域社会との合意形成
・鉱山開発に必要な許認可

現在は、この長い工程の入口に位置しています。

■ 東側へ鉱脈が延びる可能性

Irving Resourcesは、25SY-003で確認された複数の高品位区間について、旧山ケ野金山の鉱脈群が東側へ延びている可能性を示すものと考えています。

過去の試錐孔23SY-001でも、1メートル当たり45.90グラム/トンの金が確認されていました。

異なる試錐孔で高品位の鉱化が確認されていることは、追加調査を進める根拠になります。

一方で、現時点では複数の点で金を確認した段階です。それぞれの区間が連続した一つの鉱体を形成しているかは分かっていません。

点を線につなぎ、さらに立体的な鉱体として把握するには、多数の追加試錐が必要です。

■ なぜ日本に高品位の金が存在するのか

日本列島は火山活動が活発な地域に位置しています。

地下のマグマによって加熱された熱水が岩石の割れ目を移動し、温度や圧力が変化すると、熱水に溶けていた金や銀が沈殿することがあります。

こうして地下の比較的浅い場所に形成されるものが、浅熱水性金銀鉱床です。

鹿児島県には、世界的にも高品位で知られる菱刈鉱山があります。

山ケ野地域も火山活動に関係した金銀鉱脈を持つ地域であり、現代の地球物理探査と深部試錐によって、過去には発見できなかった鉱脈を探しています。

■ 日本の金生産は増えるのか

新たな商業金山へ発展すれば、国内の鉱物資源開発にとって大きな意味を持ちます。

金は宝飾品や資産として利用されるだけでなく、腐食しにくく電気を通しやすい性質から、半導体、電子機器、通信機器、医療機器などにも使用されます。

国内で金を生産できれば、資源の国内確保や地域産業の形成につながる可能性があります。

ただし、一つの鉱山が開発されても、世界全体の金市場や金価格を大きく変えるとは限りません。

まず確認すべきなのは、金価格への影響ではなく、山ケ野地域で採算の取れる資源量を証明できるかどうかです。

■ 外資主導である点をどう見るか

今回の共同事業では、米国企業Newmontの子会社が60%、カナダ企業Irving Resourcesが27.5%の持分を持っています。

日本企業である住友商事の持分は12.5%です。

日本国内の資源を外資系企業が中心となって調査することについては、さまざまな見方が考えられます。

一方で、大規模な鉱物探査には長期間の調査、多額の資金、高度な専門知識が必要です。世界的な鉱山会社が参加することで、調査を継続できる可能性が高まります。

重要なのは、許認可、税金、雇用、地域経済への還元、環境管理などを含め、日本国内でどのような事業構造が作られるかです。

現段階では鉱山開発自体が決まっていないため、将来の利益配分や国内への経済効果を断定することはできません。

■ 投資家が確認すべき進捗

このプロジェクトを投資対象との関係から見る場合も、高品位の分析結果だけで判断するのは早過ぎます。

今後の重要な確認項目は次のとおりです。

・追加試錐でも高品位区間が確認されるか
・複数の鉱脈に連続性があるか
・初期の鉱物資源量が公表されるか
・独立した技術報告書が作成されるか
・金属回収試験で十分な回収率を得られるか
・概略経済性評価へ進むか
・Newmontが追加資金を投入するか
・鉱山開発の正式決定が行われるか
・必要な許認可と地域合意を得られるか
・住友商事の事業や業績にどの程度寄与するか

Newmontのような大手企業が参加していても、探鉱プロジェクトが必ず鉱山開発へ進むとは限りません。

同社自身も、鉱床の発見から実際の鉱山開発へ進む確率は非常に低く、長い調査が必要だと説明しています。

■ 半世紀ぶりの新金山へ進めるか

山ケ野地域で確認された金品位46.10グラム/トンという結果は、追加探査を進める価値を示す重要な情報です。

旧金山の周辺や地下深部に、過去には十分調べられなかった鉱脈が残されている可能性があります。

一方、現在確認されているのは、限られた幅の試錐区間です。

資源量、埋蔵量、採算性、環境対策、開発時期は、いずれも確定していません。

このプロジェクトの本当の転換点は、さらに高い品位が見つかることだけではありません。

複数の試錐結果から鉱体の広がりが示され、資源量が公表され、経済性評価と開発判断へ進むことです。

未来産業地図では、「新金山が発見された」と結論付けず、山ケ野の探鉱が資源量の確認、開発判断、鉱山建設へ進めるかを継続的に追跡します。

 

【参考資料】

Irving Resources
Irving Resources Announces Further Drilling Results at the Yamagano Joint Venture, Kyushu, Japan
https://irvresources.com/irving-resources-announces-further-drilling-results-at-the-yamagano-joint-venture-kyushu-japan/

Irving Resources
Irving Resources Reports Formation of Yamagano and Noto Joint Venture
https://irvresources.com/irving-resources-reports-formation-of-yamagano-and-noto-joint-venture/

Newmont Corporation
The Mining Process
https://www.newmont.com/about-us/about-mining/Mining-at-Newmont/the-mining-process/default.aspx

【記事末尾の注意書き】

本記事は、企業が公開した資料を基に、鉱物資源探査と事業化の進捗を整理したものです。試錐で高品位の金が確認されたことは、採掘可能な埋蔵量や鉱山開発の決定を意味しません。特定企業の株式その他の金融商品の購入を推奨するものではなく、将来の業績、株価、資源量、鉱山開発を保証するものでもありません。投資判断は、ご自身の責任で最新の開示資料などをご確認ください。

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この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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