世界最大の液化水素船、その「神経系」を横河電機が受注 川崎重工の坂出建造が具体化

世界最大の液化水素船、その「神経系」を横河電機が受注
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世界最大の液化水素運搬船で具体的な発注が進む

川崎重工業が建造する世界最大の4万m³型液化水素運搬船で、船内設備を動かす具体的なシステムの発注先が明らかになりました。

横河電機は2026年9月14日、川崎重工から4万m³型液化水素運搬船と、水素燃料船2隻に搭載する制御システムを受注したと発表しました。

液化水素運搬船は、川崎重工の坂出工場で建造されます。

未来産業地図では、坂出工場への約450億円の設備投資と、液化ガス運搬船の建造能力強化を追跡しています。今回の受注は、造船所の設備を整える段階から、船へ搭載する具体的な機器と担当企業が決まる段階へ進んでいることを示します。

ただし、横河電機の受注が約450億円の設備投資によって決定したと断定することはできません。

約450億円の計画は坂出工場の建造能力を強化する投資であり、今回の発表は同工場で建造される液化水素運搬船の搭載システムに関する受注です。両者は同じ建造拠点と次世代船舶に関係しますが、契約としては分けて考える必要があります。

横河電機が担うのは船の「神経系」

今回、横河電機が液化水素運搬船へ提供するのは、船内設備を統合的に監視・制御するシステムです。

船内の設備がどのような状態にあるのかを確認し、温度、圧力、流量などの情報をもとに機器を制御します。異常が発生した場合に設備を安全側へ停止させる、緊急シャットダウン機能も備えます。

これは液化水素を貯蔵するタンクそのものではありませんが、複数の設備をつなぎ、安全に運転させる船の「神経系」に相当します。

液化水素は約マイナス253度という極低温で扱われます。温度上昇による蒸発、圧力変化、水素の漏えい、設備の異常などを監視し、安全に運航できる仕組みが必要です。

液化水素を大量輸送できる船体やタンクを建造できても、監視・制御・安全停止のシステムが成立しなければ、商用規模の運航はできません。

水素燃料船2隻向けのシステムも受注

横河電機が受注したのは、液化水素運搬船向けシステムだけではありません。

水素燃料船2隻に搭載される水素燃料供給システム、Marine Hydrogen Fuel System向けにも、制御・監視・安全機能を統合した制御システムを提供します。

水素燃料供給システムは、船内の液化水素タンクからエンジンへ水素を供給する設備です。

燃料の貯蔵、昇圧、気化、供給などを適切に管理し、エンジンの運転状態に応じて安全に燃料を送る必要があります。

今回の受注は、液化水素を「運ぶ船」と、水素を「燃料として使用する船」の両方で、横河電機の制御技術が採用されたことを意味します。

LNG船で蓄積した技術を液化水素へ展開

横河電機は、LNG運搬船向けの制御システムで供給実績を持っています。

LNGも極低温で輸送される液化ガスであり、タンク、配管、ポンプ、圧縮機、安全装置などを監視・制御する必要があります。

液化水素にはLNGと異なる性質や、より低い温度への対応が必要ですが、液化ガス運搬船で蓄積してきた制御・安全計装の経験は活用できます。

今回の受注が計画どおり納入され、船舶の実証運航で性能と信頼性が確認されれば、将来の大型液化水素運搬船や水素燃料船へ横展開できる可能性があります。

一方、現時点では液化水素船が多数建造される市場が確立したわけではありません。水素の製造コスト、輸送コスト、需要、受入基地の整備状況によって、将来の船舶数は変わります。

NEDOの実証事業で建造される

対象となる船舶は、NEDOのグリーンイノベーション基金事業として建造されます。

4万m³型液化水素運搬船は、日本水素エネルギーが事業主体となる「液化水素サプライチェーンの商用化実証」で使用されます。

川崎重工は2026年1月、日本水素エネルギーとの間で造船契約を締結しました。船は坂出工場で建造され、2030年度までに基地との間の荷役や、国際海上輸送を想定した外洋条件での実証試験を行う計画です。

水素燃料船2隻についても、NEDOの「次世代船舶の開発」に関係する実証船です。

今回の横河電機の受注は、研究段階の構想ではなく、実証船へ搭載する設備の具体的な発注です。

横河電機の業績へどこまで影響するのか

横河電機の2026年3月期の連結売上高は6,048億円です。

今回の受注額は公表されていません。納入時期、契約期間、利益率についても、公式発表では明らかにされていません。

そのため、この一件だけで横河電機全体の業績を大きく押し上げるとは判断できません。

投資判断で重要なのは、今回のシステムが問題なく納入され、実証運航で性能を確認した後、次の液化水素運搬船や水素燃料船でも継続受注できるかです。

制御システムは、初期の機器販売だけでなく、試運転、保守、部品交換、ソフトウェア更新、サイバーセキュリティ、設備改修など、船舶の運用期間にわたるサービスへつながる可能性があります。

横河電機が水素関連設備の監視・制御で実績を積めば、船舶だけでなく、液化設備、貯蔵基地、荷役設備、水素発電設備などへの展開も考えられます。

ただし、水素サプライチェーン全体の事業化が遅れれば、後続案件の受注時期も遅れる可能性があります。

坂出工場を中心に国内企業への波及が見え始めた

液化水素運搬船は、川崎重工だけで完成させるものではありません。

船体、貨物タンク、断熱設備、配管、ポンプ、圧縮機、電気推進システム、監視制御、安全装置など、多数の企業が製品と技術を供給します。

横河電機の受注によって、川崎重工の大型船建造が、国内の制御・計測産業へ仕事を波及させる具体例が確認できました。

坂出工場への約450億円の投資が日本造船の復権につながるかを判断するには、工場の建造能力だけでなく、こうした国内サプライヤーへの発注が継続するかを見る必要があります。

今後確認すべき点

今回の発表で、横河電機が液化水素運搬船と水素燃料船の制御システムを受注したことは確認できました。

今後は、次の変化を追跡します。

  • 制御システムの納入時期

  • 受注額と採算性

  • 船内への搭載完了

  • 4万m³型液化水素運搬船の起工

  • 船体と貨物タンクの完成

  • 進水と竣工

  • 制御システムの試運転

  • 緊急シャットダウン機能の検証

  • 2030年度までの実証運航

  • 後続の液化水素運搬船からの受注

  • 水素燃料船2隻の建造状況

  • 保守・運用サービス契約

  • 横河電機の制御事業への売上寄与

液化水素船の建造計画が部品発注の段階へ進んだ

川崎重工の坂出工場では、世界最大となる4万m³型液化水素運搬船の建造が計画されています。

今回、横河電機が船内の監視・制御と安全停止を担うシステムを受注したことで、計画は具体的な搭載設備と供給企業が決まる段階へ進みました。

ただし、受注したことと、水素輸送事業が商業的に成立することは同じではありません。

今後は、船の完成と実証運航だけでなく、液化水素の製造コスト、輸送量、需要、後続船の発注が重要になります。

未来産業地図では、坂出工場の設備投資、船舶の建造、国内企業への発注、実証結果、横河電機の継続受注まで追跡します。

主な根拠資料

横河電機
「世界最大となる液化水素運搬船および水素燃料船向け制御システムを川崎重工業から受注」
https://www.yokogawa.co.jp/news/press-releases/2026/2026-09-14-ja/

川崎重工業・日本水素エネルギー
「世界最大となる40,000m³型液化水素運搬船の造船契約を締結」
https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_260106-1.pdf

川崎重工業
「造船業再生基金に係る船舶の供給確保計画の認定について」
https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20260911_1.html

NEDOグリーンイノベーション基金
「大規模水素サプライチェーンの構築」
https://green-innovation.nedo.go.jp/project/hydrogen-supply-chain/

NEDOグリーンイノベーション基金
「次世代船舶の開発」
https://green-innovation.nedo.go.jp/project/development-next-generation-vessels/

横河電機
「基本情報・事業概要」
https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/company-overview/general-information/

注意事項

本記事は、企業および公的機関が公開した資料をもとに、技術とプロジェクトの進展を整理したものです。

受注額、納入時期、利益率は公表されていません。今回の受注が、将来の継続受注、収益拡大または株価上昇を保証するものではありません。

本記事は特定企業の株式購入、売却その他の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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銘柄売買日区分約定価格株数ステータス詳細
横河電機(6841)2026-09-16買付4,590円1保有中売買記録詳細

この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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