川崎重工×神戸製鋼、液化水素船の蒸発ガスを燃料へ 世界最大船向け圧縮機を契約

川崎重工×神戸製鋼
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世界最大の液化水素運搬船に神戸製鋼の圧縮機

川崎重工業が坂出工場で建造する世界最大の4万m³型液化水素運搬船で、新たな国内供給企業が明らかになりました。

川崎重工と神戸製鋼所は2026年9月15日、液化水素運搬船向けの燃料ガス供給用油冷式スクリュ圧縮機について、供給契約を締結したと発表しました。

前日の9月14日には、横河電機が同じ4万m³型液化水素運搬船向けの統合制御システムを受注したと発表しています。

船体を建造する川崎重工に加え、制御システムを横河電機、燃料ガス供給用圧縮機を神戸製鋼が担うことが明らかになり、国産液化水素運搬船のサプライチェーンが具体的に見え始めました。

液化水素は運ぶ途中でも少しずつ蒸発する

液化水素は、約マイナス253度という極低温で液体の状態を維持します。

貨物タンクには高度な断熱設備が使われますが、外部から侵入する熱を完全にゼロにすることはできません。タンク内部の液化水素は少しずつ蒸発し、水素ガスが発生します。

この自然に発生するガスは、ボイルオフガスと呼ばれます。

ボイルオフガスが増えるとタンク内部の圧力が上昇するため、適切に処理しなければなりません。

処理方法の一つが、発生したガスを船の発電用燃料として利用する方法です。

ただし、タンクから発生した水素ガスを、そのままエンジンへ安定して供給できるわけではありません。エンジンが必要とする圧力まで昇圧し、負荷の変化に合わせて供給量を調整する設備が必要です。

神戸製鋼の圧縮機が水素をエンジンへ送る

今回供給される油冷式スクリュ圧縮機は、液化水素タンクから発生したボイルオフガスを圧縮し、船内の発電用エンジンへ供給します。

スクリュ圧縮機は、内部のローターを回転させてガスを圧縮する機械です。

神戸製鋼によると、今回の圧縮機は高い信頼性、船の運転状態に応じた負荷変動への追従性、高性能な油分離システムなどを備えます。

圧縮された水素ガスは、水素と油の両方を燃料として使用できる二元燃料発電機エンジンへ送られます。

船内では、このエンジンで発電した電力を使用して推進用モーターを動かす電気推進システムが採用されます。

液化水素を貨物として運ぶだけでなく、輸送中に自然発生する水素ガスを船自身の燃料として利用する構成です。

捨てる可能性のあるガスを有効利用する

タンクから発生するボイルオフガスを処理できなければ、圧力を下げるためにガスを放出または燃焼処理する必要が生じます。

今回のシステムでは、ボイルオフガスを圧縮して発電用燃料として利用します。

これにより、輸送している水素を無駄にする量を抑えるとともに、従来の油燃料の使用量を減らすことが期待されます。

ただし、船舶運航時のCO₂排出量が完全にゼロになると断定することはできません。

本船は油燃料も使用できる二元燃料エンジンを搭載します。実際の排出削減量は、水素と油の使用割合、航行条件、発電負荷、ボイルオフガスの発生量などによって変化します。

LNG船向け圧縮機の経験を液化水素へ展開

神戸製鋼は、LNG運搬船向けにも燃料ガス供給用圧縮機を提供してきました。

LNG運搬船でも、貨物タンクから自然発生するボイルオフガスを圧縮し、推進用エンジンや発電機へ送る設備が使われています。

神戸製鋼は2016年、舶用二元燃料エンジンへの燃料供給用途として、油冷式スクリュ圧縮機を受注した実績を公表しています。

今回の契約は、LNG船で蓄積した圧縮機の設計、ガス処理、油分離、負荷追従などの技術を、液化水素運搬船へ展開するものです。

液化水素はLNGよりも低い温度で扱われ、ガスの密度や漏えい特性も異なります。既存のLNG向け機器をそのまま転用するのではなく、水素の性質と船内の運転条件に対応した設計と検証が必要です。

坂出工場への450億円投資とどう関係するのか

川崎重工は、坂出工場へ約450億円を投じ、液化ガス運搬船や次世代エネルギー運搬船の建造能力を強化します。

4万m³型液化水素運搬船も、坂出工場で建造されます。

今回の神戸製鋼との契約は、坂出工場へ導入する生産設備の発注ではありません。坂出工場で建造する船へ搭載する圧縮機の供給契約です。

したがって、「450億円の設備投資を神戸製鋼が受注した」という意味ではありません。

一方で、川崎重工が液化水素運搬船を国内で建造することによって、圧縮機、制御システム、電気設備などを担う国内企業へ仕事が波及する具体例と評価できます。

日本の造船業を再生する効果は、造船所の雇用と生産能力だけではありません。船へ搭載する高付加価値機器が国内企業から調達されれば、機械、電機、計測、素材などへ経済効果が広がります。

神戸製鋼にとっては「鉄」ではなく機械事業の受注

神戸製鋼という社名から、鉄鋼製品の企業という印象を持つ人も少なくありません。

しかし、今回の契約を担うのは機械事業です。

神戸製鋼は、石油・ガス、化学、エネルギー、船舶などで使用される圧縮機を展開しています。液化水素運搬船への採用は、同社が持つ圧縮機技術の新しい用途になります。

今回の供給契約額、納入時期、利益率は公表されていません。

神戸製鋼の連結売上高は2兆円を超える規模であり、圧縮機一式の契約だけで企業全体の業績が大きく変わるとは判断できません。

重要なのは、今回の機器が実証船で安定して稼働し、次の大型液化水素運搬船でも採用されるかです。

液化水素運搬船の建造隻数が増えれば、圧縮機本体だけでなく、交換部品、保守、改修などの継続的な需要につながる可能性があります。

一方、水素の製造・輸送コストが下がらず、大型水素サプライチェーンの整備が遅れれば、後続船の需要も限定されます。

国産液化水素船の供給網が見えてきた

4万m³型液化水素運搬船では、複数の日本企業による供給体制が形成されています。

川崎重工が船体と液化水素関連設備を建造し、横河電機が統合制御システムを供給します。TMEICは電気推進システムを受注し、神戸製鋼が燃料ガス供給用圧縮機を供給します。

個別の発注だけを見ると、企業全体への業績影響は限定的かもしれません。

しかし、船体、推進、制御、圧縮機、安全設備を国内企業が分担することは、日本が液化水素運搬船を一隻建造するだけでなく、関連機器を供給できる産業基盤を維持するうえで重要です。

この実証船で技術と運用実績を積み、将来の商用船へ継続受注できるかが本当の評価点になります。

今後確認すべき点

今回の発表で、神戸製鋼の油冷式スクリュ圧縮機が4万m³型液化水素運搬船へ供給されることは確認できました。

今後は、次の変化を追跡します。

  • 圧縮機の製造開始

  • 圧縮機の納入時期

  • 契約金額と採算性

  • 船内への搭載完了

  • 水素ガスを使った運転試験

  • 油分離性能と長時間運転の信頼性

  • ボイルオフガスの有効利用率

  • 二元燃料エンジンの水素使用割合

  • 実際のCO₂排出削減量

  • 船舶の起工、進水、竣工

  • 2030年度までの実証運航

  • 後続の液化水素運搬船への採用

  • 圧縮機の保守・部品交換契約

  • 神戸製鋼の機械事業への売上・利益寄与

一隻の実証船から継続受注へつながるか

神戸製鋼の圧縮機は、液化水素を運ぶ過程で自然発生するガスを、船の発電用燃料として利用するための重要な機器です。

今回の契約によって、LNG船で蓄積してきた圧縮機技術を、液化水素輸送へ展開する具体的な案件が確認できました。

ただし、一隻の実証船へ機器を供給することと、液化水素船向け事業が収益の柱になることは同じではありません。

将来の業績への影響を判断するには、実証船での稼働実績、後続船の建造計画、圧縮機の追加受注、保守収入まで確認する必要があります。

未来産業地図では、坂出工場での建造状況、搭載機器を供給する国内企業、実証結果、商用船への展開まで継続して追跡します。

主な根拠資料

神戸製鋼所・川崎重工業
「液化水素運搬船向け燃料ガス供給用油冷式スクリュ圧縮機の供給契約を締結」
https://www.kobelco.co.jp/releases/2026/1219161_18738.html

川崎重工業・日本水素エネルギー
「世界最大となる40,000m³型液化水素運搬船の造船契約を締結」
https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_260106-1.pdf

川崎重工業
「造船業再生基金に係る船舶の供給確保計画の認定について」
https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20260911_1.html

神戸製鋼所
「LNG船向け非汎用スクリュ式圧縮機の受注について」
https://www.kobelco.co.jp/releases/1195651_15541.html

神戸製鋼所
「R&D神戸製鋼技報 Vol.74 No.1 LNG運搬船用圧縮機」
https://www.kobelco.co.jp/r-d/technology-review/vol74_1.html

神戸製鋼所
「会社概要」
https://www.kobelco.co.jp/about-kobelco/profile.html

NEDOグリーンイノベーション基金
「大規模水素サプライチェーンの構築」
https://green-innovation.nedo.go.jp/project/hydrogen-supply-chain/

注意事項

本記事は、企業および公的機関が公開した資料をもとに、技術とプロジェクトの進展を整理したものです。

契約金額、納入時期、利益率は公表されていません。今回の供給契約が、将来の継続受注、収益拡大または株価上昇を保証するものではありません。

本記事は特定企業の株式購入、売却その他の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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銘柄売買日区分約定価格株数ステータス詳細
神戸製鋼所(5406)2026-09-16買付2,042円1保有中売買記録詳細

この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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