ロケット打ち上げ拠点を増強、国内全4カ所で 2030年代に年30回目標

ロケット打ち上げ拠点を増強

国内のロケット打ち上げ拠点が、全国4カ所(種子島宇宙センター、内之浦宇宙空間観測所、北海道スペースポート、串本町のスペースポート紀伊)で増強され、2030年代に年間30回の打ち上げを目指す方針が報じられました。

目次

現在確定していること

国内の複数の打ち上げ拠点で、設備増強や打ち上げ頻度を高める取り組みが進められています。背景には、H3ロケットなど国産ロケットの国際競争力強化や、海外の商業衛星打ち上げ需要を国内に取り込む狙いがあるとみられます。各拠点を担う企業の現状は次の通りです。

  • 三菱重工業(種子島・H3ロケット):H3ロケット8号機の打ち上げ失敗を受け、原因究明のため9号機(準天頂衛星「みちびき7号機」搭載予定)の打ち上げを延期中
  • インターステラテクノロジズ(北海道スペースポート・ZEROロケット):小型衛星専用の2段式ロケット「ZERO」を開発中。初号機にはすでに国内外7衛星(大学・高校生団体などによる教育・技術実証用)の顧客がつき、2026年1月にシリーズFで201億円(累計446億円)を調達
  • SPACE ONE(串本・カイロスロケット):2026年3月のカイロス3号機打ち上げで飛行中断となり原因究明中。2026年度には、防衛省の「多軌道観測衛星」(キヤノン電子製)の打ち上げも予定されている

将来的に目指していること

2030年代に、国内4拠点を合わせて年間30回の打ち上げ体制を構築することが目標とされています。打ち上げ機会が増えることで、政府・民間双方の衛星計画が組みやすくなると期待されています。

世界と比べると、差は小さくない

2025年、世界全体でのロケット打ち上げは合計324回にのぼりました。うち米スペースXだけで165回、中国は92回で、この2社・2国だけで世界全体のおよそ9割近くを占めています。これに対し、日本が目指す打ち上げ回数は、JAXAの目標ベースで「年6回」です。しかもこれは実績ではなく、これから目指す数字にとどまります(打ち上げ回数は複数の集計に基づく概算値です)。

宇宙予算の規模でも差があります。米NASAの予算が年間およそ254億ドルであるのに対し、中国は民生・軍事を合わせた推計でおよそ240億ドル、日本はおよそ55億ドルにとどまるとされています(いずれも複数の集計・推計をもとにした概算値)。

月面開発でも先行する中国

中国は2024年、嫦娥6号によって世界で初めて月の裏側から試料を持ち帰ることに成功しました。中国とロシアが主導する「国際月面研究ステーション」は、2028年に嫦娥8号で基礎工事が始まる計画で、2036年までに月面原子力発電所を建設する構想も明らかになっています。月の南極にある水を含む氷や、核融合燃料として注目されるヘリウム3といった資源の利用も視野に入れられています。

実現によって得られるもの

  • 国内の衛星打ち上げ待ち(順番待ち)の解消
  • 海外の商業衛星需要を取り込むことによる、打ち上げ関連産業の収益機会の拡大
  • 国内で衛星コンステレーションを構築しようとする企業にとっての、打ち上げ手段の選択肢拡大

慎重に見るべき点

「年30回」という目標の裏側で、担い手となる各社は足元で立て直しの途中にあります。H3ロケットは8号機が打ち上げに失敗し後続機が延期中、カイロスロケットも3号機が飛行中断となっており、いずれも原因究明が終わっていません。打ち上げ頻度の引き上げは、こうした信頼性の回復と両立させる必要があります。

安全保障面でも、依存は残っている

規模の差だけでなく、安全保障の分野でも日本は宇宙で米国に頼っている部分が少なくありません。弾道ミサイルの発射を探知する早期警戒衛星は、日本は自前では持たず、米国の衛星情報に依存しています。国内に展開するXバンドレーダー(車力・経ヶ岬)も米軍が運用しています。衛星測位(GPS)についても、「みちびき」はGPSの精度や安定性を補う役割にとどまり、GPSそのものへの依存は解消されていません。

唯一、自前化が動き出している分野が、宇宙空間の監視(不審な衛星や宇宙ごみの監視)です。SPACE ONEは、キヤノン電子が製造する防衛省の衛星を、2026年度にカイロスロケットで打ち上げる契約を結んでおり、静止軌道上の衛星の動きを検知する実証が計画されています。

ここからは、未来産業地図としての推測です

世界との規模の差を踏まえると、「年30回」という今回の目標の意味も違って見えてきます。これは単なる商業衛星の取り込みだけでなく、打ち上げ回数・予算規模・月面開発のいずれでも開いている差を縮めるための、最初の一歩という可能性があります。自前の衛星を、自前のロケットで、自分たちの都合のよいタイミングで打ち上げられること自体が、宇宙における自立にとって欠かせない土台になるとも考えられます。

打ち上げ機会が増えることは、衛星を使ったインフラを計画している企業にとっても、選択肢が広がる可能性があります。例えばNECは、光通信衛星コンステレーションの実用化に向けて、2027年度に技術実証衛星を打ち上げる計画を公表しています。国内の打ち上げ拠点が増強されることは、こうした計画にとって追い風になり得る環境変化の一つと言えそうです。

これらの結びつきは、あくまで未来産業地図としての推測です。今回報じられた打ち上げ拠点増強の方針そのものに、特定企業や、安全保障の自立化そのものへの直接の言及があるわけではない点にご留意ください。

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この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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