情報理論的安全な鍵共有を可能とする小型・低軌道衛星の研究開発

情報理論的安全な鍵共有を可能とする小型・低軌道衛星の研究開発

PROJECT STATUS

プロジェクトの現在地

現在の段階
研究開発
状態
進行中
開始日
2025-03-01
商品化目標
未公表

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)を代表機関として、日本独自の小型・低軌道衛星と可搬型光地上局を開発し、地球規模で安全な暗号鍵を共有する衛星量子暗号通信の実現を目指す国家プロジェクトです。

本プロジェクトは、JAXA宇宙戦略基金の第一期技術開発テーマ「衛星量子暗号通信技術の開発・実証」に採択されました。

事業名は「情報理論的安全な鍵共有を可能とする小型・低軌道衛星の研究開発」です。

実施期間は2025年3月から2030年3月までの5年間を予定しています。ただし、途中のステージゲート評価などにより、計画が変更される可能性があります。

現在広く使用されている暗号の多くは、計算に非常に長い時間がかかることを安全性の根拠としています。

しかし、将来、高性能な量子コンピューターが実現すると、現在使用されている一部の公開鍵暗号が解読される可能性が指摘されています。

現在は解読できない暗号データを盗み出して保存し、将来の高性能コンピューターで解読する「今盗み、後で解読する」攻撃への懸念もあります。

量子鍵配送は、光子の量子的な性質を利用して暗号鍵を共有する技術です。通信途中で盗聴が行われると量子状態が変化するため、盗聴を検知できることが特徴です。

適切な装置と運用条件が満たされた場合、計算機の性能に依存しない「情報理論的安全性」を持つ鍵共有を実現できるとされています。

地上の光ファイバーを使った量子鍵配送は実用化へ近づいていますが、伝送距離が長くなるほど光が弱くなります。

大陸間のような数百kmから数千kmの距離を光ファイバーで直接結ぶには、量子中継技術が必要です。しかし、実用的な量子中継技術の完成には長期間の研究開発が必要とされています。

そこで、低軌道衛星と地上局を光で結び、宇宙空間を経由して遠距離へ暗号鍵を届ける構想が注目されています。

本プロジェクトでは、量子鍵配送と物理レイヤ暗号による鍵共有機能を搭載した300kg級の小型・低軌道衛星を開発します。

併せて、衛星から送信される微弱な光を捕捉して追尾する可搬型光地上局と、衛星系ネットワークを地上の量子鍵配送網へ接続する統合ネットワーク技術を開発します。

NICTなどの研究チームは、2024年に国際宇宙ステーションと地上の可搬型光地上局を使った物理レイヤ暗号通信を実証しました。

この実験では、国際宇宙ステーションが1回上空を通過する間に、100万ビット以上の安全な秘密鍵を共有しました。

さらに、その鍵を使って宇宙にある写真データをワンタイムパッド方式で暗号化し、地上へ送信して復号することにも成功しています。

今回の国家プロジェクトは、この実証成果を基に、専用の国産小型衛星、量子鍵配送装置、可搬型光地上局、地上ネットワークとの統合運用へ発展させるものです。

想定される用途には、外交・安全保障上の通信、在外公館との通信、行政機関、災害派遣、重要インフラ、金融機関などの高い秘匿性が必要な通信があります。

一方、衛星量子暗号通信には、衛星を高精度で捕捉・追尾する技術、雲や雨などの気象条件、暗号鍵の生成速度、地上局の配置、衛星の製造・打上げ費用などの課題があります。

JAXAの資料では、衛星を用いた量子鍵配送による暗号通信市場は、現時点ではまだ存在しない市場であると説明されています。

本プロジェクトでは、装置を開発するだけでなく、潜在的な利用者や協業先と連携し、利用場面と事業モデルを検討する計画です。

未来産業地図では、衛星の設計・製造、搭載装置の完成、打上げ計画、地上局の整備、宇宙実証、参加企業、想定利用者、商用サービス計画が公表されるかを継続して追跡します。

使用技術とプロジェクト内での用途

当サイトで確認した最新動向

最新動向

この記事を書いた人

趣味を兼ねた骨董品の売買を経て、株式やFXなどの投資に関心を持つようになりました。

投資先を考える根拠として日本企業の技術を調べる中で、見つけた情報とその後の進展を記録する必要性を感じ、AIの力を借りて「未来産業地図」を制作。

技術・企業・プロジェクトを結び付け、研究、実証、量産、商用化までの動きを継続して追跡しています。

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